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「擁壁がある物件」を売却する方法4選

不動産売却
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親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!

そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は傾斜や高低差のある地域にありませんか?

傾斜や高低差のある地域の「擁壁がある物件」を売却することは条件によって難しい可能性があります。

そこで「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、600件以上の売買経験をもとに、

  • 擁壁とは何か
  • 擁壁の安全性について
  • がけ条例の制限
  • 擁壁がある物件の4つのデメリット
  • 契約不適合責任のリスク
  • 擁壁がある物件を売却する方法4選

を、不動産買取専門業者目線で解説します!

この記事を読めば、なかなか売れない擁壁がある物件でも、売却する方法が見つかります。

擁壁とは何か

「擁壁(ようへき)」とは、一般的に傾斜地や高低差のある土地に建物を建てる場合に、建物の荷重、土圧や雨で土砂が流れることによる土砂崩れを防ぐため必要となる構造物です。

擁壁にはいくつかの種類があります。

擁壁は、鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造又は間知石練積み造その他の練積み造のものとすること。

宅地造成及び特定盛土等規制法施行令第8条

コンクリート擁壁

最近の擁壁では「コンクリート擁壁」が主流で使われています。

コンクリート擁壁の中でも、鉄筋を埋め込んで作る鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄筋を通さない無筋コンクリート造、工場で作られた既製品の擁壁を使用するプレキャスト造などの種類があります。

特に鉄筋コンクリート造は、鉄筋を配筋することで強度を保っているため、下記のようなメリットがあります。

  • 他の擁壁よりも断面が小さくてすみ、すっきりと見栄えが良い
  • 構造計算が用意で、斜面に対して垂直に立てやすい
  • 強い耐震性能を持ち合わせている

練積み造擁壁

「練積み造擁壁」とはブロックを積み上げて作る工法の擁壁で、主に間知ブロック練積み造とCP型枠ブロック造があります。

間知ブロックは、通常のブロックとは違い斜めに組み合わせて積み上げます。一般的に壁面が傾いていることが特徴です。

CP型枠ブロック造も広く利用されており、コンクリートブロックの中に鉄筋と生コンクリートを充填して、強い圧力にも耐えられるように作られます。

いずれも軽量で低価格、取り扱いやすいことがメリットです。

なお、境界塀に使われる一般的なコンクリートブロック(CB)で擁壁を作ることは認められていません。

石積み擁壁

「石積み擁壁」はその名の通り石を積み上げて作る擁壁です。

石の間にモルタルやコンクリートを流し込み接合して積み上げていく練石積み擁壁や、コンクリートを使わず天然石を積み上げて作る空石積み擁壁、加工成形した軽石を積み上げて作る大谷石積み擁壁などの種類があります。

石積み擁壁は一般的に他の擁壁よりも強度が劣るといわれ、安全性には注意が必要となります。

特に空石積み擁壁や大谷石積み擁壁は強度が弱く、現在は法律上擁壁と認められません。

現在の技術基準を満たさない擁壁

国土交通省より引用

前述したように空石積み擁壁や大谷石積み擁壁、コンクリートブロック(CB)造の擁壁は、現在の技術基準を満たしていません。

それ以外には、ブロックなどを継ぎ足してつくられた「増し積み擁壁」、擁壁の上部に床版が張り出した「張り出し床版付擁壁」、擁壁の上に別の擁壁が設けられた「二段擁壁」も同様に、現在の技術基準を満たしていません。

これらの擁壁の上に建物が建っている場合は、安全性に注意が必要です。

擁壁の安全性の確認について

擁壁の調査については、まずは下記の項目について現地の状況を確認します。

  • 表面に亀裂、ひび、はらみなどが無いか
  • 擁壁の材質は何か
  • 適切な水抜き穴が設置されているか
  • 増し積み擁壁や二段擁壁などになっていないか
  • 高さが2m以上あるか

次に、役所にて次の項目を調査します。

  • 物件が「宅地造成及び特定盛土等規制法」の区域内にある場合、宅地造成に関する工事の許可を受けているか否か
  • 宅地造成に関する工事の許可を受けていれば、その擁壁が宅地造成に関する工事で作られたものかどうか
  • 許可を受けていないければ、「都市計画法」による開発許可を受けているかどうか
  • 開発許可を受けていれば、その擁壁が開発行為によって作られたものかどうか
  • 高さが2m以上ある場合、「建築基準法」による建築確認を受けているかどうか

これらの調査により、擁壁の安全性を判断します。

しかし、これらの調査をクリアしたとしても、擁壁の安全性を保証できるものではありません。

がけ条例の制限

擁壁がある物件は、その擁壁の高さにより、「がけ条例」の制限を受ける場合があります。

不動産における「がけ」とは一般的に、「高さが2m(自治体によっては3m)を超え、30度を超える傾斜のある土地」をいい、擁壁の高さが2m(自治体によっては3m)を超える場合、その擁壁について建築士が安全性を認めなければ、がけとして扱われます。

このがけの上または下に建物を建てる場合に、自治体が定めるがけ条例が適用されますが、その制限内容などは各自治体によって異なります。

例えば福岡市では、3mを超えるがけの場合、がけの高さの2倍に相当する範囲内には居室を有する建築物の建築ができません。

がけ(地表面が水平面に対し 30 度を超える傾斜度をなす土地をいう。以下同じ。)の高さ(がけの上端と下端との垂直距離をいう。以下同じ。)が3メートルを超える場合においては,当該がけの上にあっては当該がけの下端から,下にあっては当該がけの上端から水平距離が当該がけの高さの2倍に相当する距離以内の位置及び当該がけには,居室を有する建築物を建築してはならない。

福岡市建築基準法施行条例第5条

一方熊本市では、2mを超えるがけの場合、がけの高さの1.5倍に相当する範囲内には建築ができません。

建築物を高さが2メートルを超える崖(地表面が水平面に対し30度を超える角度をなす土地
で硬岩盤(風化の著しいものを除く。)以外のものをいう。)(以下「崖」という。)に接し、又は近接して建築しようとする場合は、崖の上にあっては崖の下端から、崖の下にあっては崖の上端から、その建築物との間に、その崖の高さの1.5倍以上の水平距離を保たなければならない。

熊本市建築基準条例第4条

同じがけ条例でも、自治体によって高さや制限の内容に違いがあります。

擁壁がある物件の4つのデメリット

坂道や階段を上がる物件、堀車庫物件は敬遠される

擁壁がある物件は傾斜地や高台にあることが多く、物件に辿り着くまで坂道を登らなければならない場合があります。

また、道路と敷地との間にも高低差がある場合、階段を上って家に入らなければならないため、特に年配の方には敬遠されがちです。

さらに駐車場が堀車庫になっている場合、堀車庫の高さによって駐車できる車種の制限がある、駐車場が広げられないなどの理由から、ファミリー層からも敬遠される可能性もあります。

擁壁の造り直しが必要になる可能性がある

擁壁は隣地との境界に作られることも多く、通常、隣地との高低差があれば高い方の敷地の所有者が擁壁を造る責任を負います。

そして設置当初は頑丈に作られた擁壁でも、永久に安全性を維持できるわけではなく、数十年経てば劣化は進みます。

擁壁の亀裂やひび割れなどの劣化を補修したとしても、中途半端な補修は根本的な解決にならない可能性があります。

そして擁壁の安全性が不十分だと判断された場合、自身の土地に建築する場合はもちろんのこと、擁壁の下にある土地の所有者が建築をする場合にも、擁壁の造り直しを求められる可能性があります。

擁壁の造り直しが必要となる場合、擁壁の高さや面積にもよりますが、数百万円~数千万円の工事費用が必要となる場合があります。

隣地に損害を与えるリスクがある

空石積み擁壁や大谷石積み擁壁、コンクリートブロック(CB)造の擁壁のように、現在の技術基準を満たしておらずそもそも強度が弱い擁壁の場合には崩壊リスクも高くなります。

亀裂やひび割れなどの劣化がある擁壁も同様です。

万が一擁壁が崩壊して隣地(擁壁の下)の家を損壊するようなことがあれば、相手方に多大な損害を与えてしまいます。

それ以外にも、隣地とつながって擁壁が築造されているような場合には、自身の擁壁だけをを造り直そうとしても、既存擁壁の解体時に隣地の擁壁を破損してしまう可能性があり、隣地の擁壁の補修費用まで考慮しなければならないリスクもあります。

建物の建築コストがかかる可能性がある

がけ条例の制限を受ける場合、基本的にはがけから高さの1.5倍または2倍の距離を離さなければ建築ができません。

ただし土地がそこまで広くない場合、実際にその距離を確保しようとすると、建物を建築するために必要な面積を確保できない可能性があります。その救済措置として、

  • がけの上に建てる場合は深基礎にする、または基礎杭を打つなどして建築士が安全性を認める構造にする
  • がけの下に建てる場合は土留めを造る、がけの崩壊で影響を受ける建物の部分を開口部のない高基礎にするなどして建築士が安全性を認める構造にする

などの方法がありますが、いずれも通常の建物より建築コストがかかるため、購入を敬遠される可能性が考えられます。

契約不適合責任のリスク

一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。

契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。

擁壁の亀裂やひび割れなどの劣化は「物理的瑕疵」に、擁壁が現在の技術基準を満たさない場合やがけ条例の制限を受ける場合の建築制限は「法的瑕疵」に該当します。また、建物についても築年数が古い物件は雨漏りやシロアリの被害など「物理的瑕疵」がある可能性が高くなります。

それらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、売主から買主に対して「告知義務」があります。

当然ながら、売買契約前に買主がそれらの瑕疵を自力で発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。

そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵について売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受けることになります。

擁壁がある物件を売却する方法4選

売却をする前に、まずは建築士による擁壁の安全性の確認を行った方が確実です。

擁壁の劣化が少ないうちに補修して売却する

擁壁の劣化はあるものの、まだ補修すれば安全性が認められる場合に、先に劣化部分の補修をし、擁壁の安全性を回復して売却するという方法があります。

工事に費用はかかりますが、擁壁の安全性不足を理由とした購入の敬遠を回避できる可能性があります。

この場合は、被害個所の状況と補修方法を買主にしっかり説明しておくことをオススメします。

施工前と施工後の写真を撮っておけば、より一層買主の安心感も増し、スムーズな売却につながる可能性も高いと思います。

擁壁を造り直して売却する

  • 石積み擁壁や大谷石積み擁壁、コンクリートブロック(CB)造の擁壁など強度が弱い擁壁
  • 増し積み擁壁や二段擁壁など違反擁壁

これらの擁壁の場合は、既存擁壁を解体し、新たに擁壁を造り直して売却するという方法があります。

もちろん工事には相当の費用がかかりますが、擁壁の安全性は確実に担保され、スムーズな売却につながる可能性も高いと思います。

擁壁は自分で対処する買主を見つける

擁壁がある物件は高台にあることが多く、眺望や陽当たり、風通しが良いなどのメリットもあります。

そのため、そういったメリットの部分を優先し擁壁の安全性は購入後に自分で対処する、という買主を見つけることもひとつの方法です。

ただし擁壁工事は相当の費用がかかる可能性があるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、そもそも買主が見つからないというリスクは覚悟しておくべきでしょう。

不動産買取専門業者に売却する

擁壁がある物件は、擁壁の状態次第でいわゆる「訳あり物件」とみなされた場合、敬遠され長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。

訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。

→「訳あり物件」を売却する方法4選

運よく眺望や陽当たりなど重視で高低差を気にしない顧客に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。

仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。

売主にとって「売却に時間がかかり、または擁壁の補修や造り直しに手間と費用と時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。

しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、また、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとっても安心です。

不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。

→不動産の売却で「買取」をオススメするケース4選

まとめ

傾斜地や高低差のある土地に建物を建てる場合に、建物の荷重、土圧や雨で土砂が流れることによる土砂崩れを防ぐため必要となる「擁壁」には、いくつかの種類があります。

  • コンクリート擁壁
  • 練積み造擁壁
  • 石積み擁壁
  • 現在の技術基準を満たさない擁壁

既存の擁壁の安全性を確認するためには、下記のような調査をします。

  • 表面に亀裂、ひび、はらみなどが無いか
  • 擁壁の材質は何か
  • 適切な水抜き穴が設置されているか
  • 増し積み擁壁や二段擁壁などになっていないか
  • 高さが2m以上あるか
  • 物件が「宅地造成及び特定盛土等規制法」の区域内にある場合、宅地造成に関する工事の許可を受けているか否か
  • 宅地造成に関する工事の許可を受けていれば、その擁壁が宅地造成に関する工事で作られたものかどうか
  • 許可を受けていないければ、「都市計画法」による開発許可を受けているかどうか
  • 開発許可を受けていれば、その擁壁が開発行為によって作られたものかどうか
  • 高さが2m以上ある場合、「建築基準法」による建築確認を受けているかどうか

なお、これらの調査をクリアしたとしても、擁壁の安全性を保証できるものではありません。

そして、擁壁が一定の高さを超えている場合「がけ」として扱われ、各自治体のがけ条例の制限を受ける場合があり、その内容は自治体によって異なります。

  • 福岡市では3mを超えるがけの場合、がけの高さの2倍に相当する範囲内には居室を有する建築物の建築ができません。
  • 熊本市では、2mを超えるがけの場合、がけの高さの1.5倍に相当する範囲内には建築ができません。

擁壁がある物件には4つのデメリットが考えられます。

  • 坂道や階段を上がる物件、堀車庫物件は敬遠される
  • 擁壁の造り直しが必要になる可能性がある
  • 隣地に損害を与えるリスクがある
  • 建物の建築コストがかかるため敬遠される

また、擁壁がある物件を売却する方法は4つ考えられます。

  • 擁壁の劣化が少ないうちに補修して売却する
  • 擁壁を造り直して売却する
  • 擁壁は自分で対処する買主を見つける
  • 不動産買取専門業者に売却する

最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。

  • 擁壁の補修や造り直しが不要
  • 仲介手数料が不要
  • 売却までの期間が短い
  • 契約不適合責任が免責となる場合がある

擁壁がある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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