親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は外壁が隣の部屋とつながっていませんか?
一般的に、外壁が隣の部屋とつながった「長屋(連棟式建物)」を売却することは難しい可能性があります。
そこで、「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、600件以上の売買経験をもとに、
- 長屋(連棟式建物)とは何か
- 連棟式建物の4つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 連棟式建物を売却する方法4選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない長屋でも、売却する方法が見つかります。
長屋(連棟式建物)とは何か
テラスハウスとは
「連棟式建物」とは、「隣の家と壁がつながっている建物」のことです。
建築基準法上では「長屋」といわれますが、長屋とは2つ以上の住戸が連なった建築物であり、住戸の間は共有の壁で仕切られて行き来ができず、それぞれの住戸に外部出入口があります。
最近では「テラスハウス」と呼ばれます。
連棟式建物の建物は壁を共有しており、次のようなメリットがあるため特に昭和の頃に数多く建てられました。
- 隙間なく建物を建てられる
- インフラ整備を共同で行える
- 特殊建築物に該当せず防火制限が比較的緩い
- 建築コストを抑えつつ土地を効率よく利用できる
テラスハウスの建物同士はつながっていますが、一戸建てのように土地やそれぞれの建物の所有権は住戸ごとに分かれています。
連棟式建物は、テラスハウス以外にタウンハウスと呼ばれる形態もあります。
続いてタウンハウスについて説明します。
タウンハウスとは
「タウンハウス」とは、建物はテラスハウスのように連棟式建物ですが、所有権ではなくマンションのように「区分所有権」を持つ形態のものです。
テラスハウスにはないタウンハウスの特徴としては、下記のとおりです。
- 庭が各住戸の専用ではなく、住民が共用できるコミュニケーションスペースとなっている
- 駐車場が各住戸前に配置されておらず、敷地の一角にまとまっている
- 区分所有となるため、単独での建て替えがテラスハウスよりも厳しい
- 管理組合がある場合がある
マンションとの違い
テラスハウスとマンションでは、「所有権」と「区分所有権」という権利面で明確に異なります。
テラスハウスは単独で所有権を持つため一戸建てに近い権利形態となります。
タウンハウスは区分所有権のため、マンションと似ているように思えますが、下記のような違いがあります。
- マンションはエントランスや廊下、エレベーター、階段など建物にも共用部分がある
- マンションは上記の共用部分を通って各住戸に出入りする
- 建築基準法上、マンションは「共同住宅」、タウンハウスは「長屋」となる
- タウンハウスは低層建物のみ、マンションは高層建物もある
連棟式建物の4つのデメリット
単独での再建築が難しい
連棟式建物は隣の住戸と壁を共有した構造のため、テラスハウスで単独での再建築を考える場合、壁がつながっている隣の住戸の所有者から合意が必要になる可能性が高いです。
また、切り離しをした後の隣の住戸の外壁工事も伴う可能性や、工事によって隣の住戸に損害を与えた場合の補償などが必要となる可能性があります。
タウンハウスの場合は区分所有権のため、再建築を考える場合マンションと同じように所有者の4/5以上の賛成が必要となる可能性があります。
再建築時に制限が厳しい場合がある
連棟式建物を再建築する際は、自分の所有する住戸部分だけではなく、すべての住戸が接道義務を満たすことができなければ、「再建築不可物件」となり、単独でも再建築することができません。
建築物の敷地は、道路に二メートル以上接しなければならない。
建築基準法第43条
再建築不可物件については、別記事にて詳しく説明しています。
また、接道義務を満たすことができたとしても、
- 建ぺい率、容積率
- 敷地面積の最低限度
- 斜線制限
- 外壁後退制限
- 路地状部分の幅員制限
などの各自治体の都市計画や条例によっては、通常の土地に住宅を建てるよりも建築が難しい場合がありますので、注意が必要です。
築年数が古い物件が多い
連棟式建物は昭和の時代によく建てられたので、築年数が古い物件が多く、雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」があったり、現行の耐震基準を満たさない「旧耐震基準物件」である可能性もあるため、一般の買主からは購入を避けられることがあります。
雨漏りやシロアリ被害など物理的瑕疵がある物件、旧耐震基準物件については、別記事にて詳しく説明しています。
住宅ローンが利用できない可能性がある
連棟式建物については、前述の3つのデメリットがネックとなり不動産の担保評価が低くなるため、購入時に住宅ローンを利用できない可能性が高くなります。
そのため、一般の買主からは購入を避けられることが多いのです。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に契約内容に適合していない部分がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
また、連棟式建物で再建築ができない物件は「法的瑕疵」に該当します。また、築年数が古い物件は雨漏りやシロアリの被害など「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
それらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、買主がまったく保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵がある物件であることを買主へ告知せず売却した場合は、契約不適合責任を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受けることになります。
連棟式建物を売却する方法4選
現金購入の方に売却する
現金で購入される方であれば、再建築不可物件のデメリットのひとつである、「住宅ローンが利用できない」という部分が関係ありません。
しかし、三井住友信託銀行による「住まいと資産形成に関する意識と実態調査(2022年)」によると、住宅取得者の約8割が住宅ローンを利用しているそうです。
約2割の現金購入客が現れるまで待つことができれば、売却できるかもしれません。
不動産投資家に売却する
不動産投資家は節税のため法人化している方が多く、法人が不動産を購入する際、住宅ローンではなく事業ローンを利用します。
事業ローンは対象となる不動産の内容ではなく、融資を受ける法人の業績をもとに融資の可否を判断しますので、物件が再建築不可であるかどうかは関係ありません。
不動産投資家が納得できる利回りが確保できれば、売却できるかもしれません。
隣の住戸の所有者に買ってもらう
隣の住戸の所有者に物件を買ってもらうことも、ひとつの手として考えられます。
住戸の間の壁を取り払うことで、居住スペースが倍になります。これは隣の住戸の所有者にとってメリットです。
その土地や建物の良さをよく知っているので、新規で購入者を探すよりも、相場に近い価格で買ってもらえるかもしれません。
ただし、住宅ローンが利用できず現金購入できる場合に限られる可能性はあります。
不動産買取専門業者に売却する
連棟式建物の物件は、建物の状態や再建築時の条件次第でいわゆる「訳あり物件」とみなされた場合、敬遠され長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく現金購入客または不動産投資家に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、または再建築の条件を満たすために手間と費用と時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」いうリスクはかなりの負担です。
不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば、これらの負担を排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
「連棟式建物」とは、「隣の家と壁がつながっている建物」のことです。
建築基準法上では「長屋」といわれますが、長屋とは2つ以上の住戸が連なった建築物であり、「テラスハウス」や「タウンハウス」などがあります。
テラスハウスは建物はつながっていますが、土地や建物の所有権は一戸建てのように住戸ごとに分かれています。
タウンハウスは所有権ではなくマンションのように「区分所有権」を持ち、共用の庭や管理組合がある場合があります。
ただしマンションと違い、共用のエントランスや廊下、エレベーター、階段などはありません。
連棟式建物のデメリットは下記の5つが考えられます。
- 単独での再建築が難しい
- 再建築時に制限が厳しい場合がある
- 築年数が古い物件が多い
- 住宅ローンが利用できない可能性がある
- 契約不適合責任を負う
そして、連棟式建物を売却する方法は4つ考えられます。
- 現金購入の方に売却する
- 不動産投資家に売却する
- 隣の住戸の所有者に買ってもらう
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは3つあります。
- 短期間で売却できる
- 仲介手数料が不要
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
連棟式建物は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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