親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は市街地に近い割には、緑豊かな住宅地ではありませんか?
市街地に近い立地にありながら緑豊かな環境の住宅地域は「風致地区」に指定されている場合があります。
「風致地区」にある物件を売却することは条件によって難しい可能性もありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 風致地区とは
- 風致地区の制限
- 風致地区のメリット、デメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 風致地区にある物件を売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない風致地区内の物件でも、売却する方法が見つかります。
風致地区とは
風致地区は、都市の風致を維持するため定める地区とする。
都市計画法第条9条第22項
「風致地区」は自然環境の保全を目的として設定される区域で、一般的に都市計画区域内で、かつ住環境の優れた地域が指定されます。
「風致」の意味は「自然の風景などのもつ趣」とされていますので、風致地区では素晴らしい景色を保つために人の手を加えることが制限され、住宅の外観や庭木の伐採に至るまで地方自治体による厳しい制限が適用されるのが特徴です。
具体的な制限については、都市計画法に基づき各地方自治体が条例で定めます。
風致地区の制限
福岡市の「福岡市風致地区内建築等規制条例」と、熊本市の「熊本市風致地区内における建築等の規制に関する条例」を参考にして説明します。
許可の必要な行為
風致地区内で次の行為をするときは、市長の許可が必要です。
- 建築物、その他の工作物の新築、改築、増築、移転
- 宅地の造成、土地の開墾、その他土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 土石の採取
- 水面の埋立て又は干拓
- 建築物等の色彩の変更
- 屋外における土石、廃棄物、又は再生資源の堆積
制限内容
風致地区内で上記の行為を行う場合は、敷地内の緑の確保等を目的として、以下の制限があります。
建物の高さ制限
- 高さ15メートル以下(福岡市の場合)
- 高さ9メートル以下(熊本市の場合)
風致地区内の建物の高さ制限は、周囲の景観との調和を図るために設けられる制限です。
建ぺい率制限
- 40%以下(福岡市の場合)
- 30%以下(熊本市の場合)
敷地面積に対する建築面積の割合を示す建ぺい率は、敷地内の緑地の保持を促進する目的で制限されます。
外壁後退の制限
建物が密集しすぎず、開放感のある景観を維持することを目的として、建築物の外壁は道路境界から2メートル以上、隣地境界から1メートル以上離さなければなりません。
外壁や屋根の色彩制限
建築物、工作物等の色彩は、周辺の風致と調和するものとし、純白や原色等派手なものは避けなければなりません。
土地の植栽の制限
福岡市の場合、みどり率(敷地面積に対して生長した樹木の樹冠を水平に投影した面積の割合)が30%以上となるよう、敷地内に必要な植栽の基準本数が定められています。
熊本市の場合、緑被率(敷地面積に対する緑被面積の割合)が20%以上、中高木率(敷地面積に対する中高木緑被面積の割合)が10%以上あることと定められています。なお、中高木とは3m以上生育する樹木です。
土地の形質変更制限
熊本市の場合は上記の制限に加え、
- 1ha以上の土地の形質の変更を行う場合は、高さが5mを超える切土または盛土を生じてはならない
- 擁壁・石積等はツタなどをはわせ、裸地の部分は植裁や芝張りなどをして、周辺の風致の保全に支障がないよう緑化に努める
などの制限があります。
このように、風致地区での制限内容は各地方自治体で異なります。
風致地区のメリット、デメリット
メリット
風致地区のメリットは、先に述べた通り素晴らしい自然環境や景色が保たれていることです。
古くから住民に慕われ守られてきた素晴らしい景観や趣に価値を感じられる方にとっては、風致地区はとても魅力的に感じるでしょう。
デメリット
風致地区では一般的な土地とは異なり、土地の形状変更や建築物の建築について厳しい制限が設定されています。
これらの制限は、素晴らしい自然環境や景色との調和を保つために設定されていますが、住宅の設計やリフォームにおける自由度への影響が大きいことがデメリットとなります。
また、建築制限が厳しいため一般的な土地よりも広い土地面積を確保しなければならない場合があり、土地取得にかかる費用が高額になる可能性があります。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
風致地区により受ける建築制限は「法的瑕疵」に該当し、プロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、売主から買主に対して「告知義務」があります。
さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
当然ながら、売買契約前に買主がそれらの瑕疵を自力で発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、物理的瑕疵や法的瑕疵に該当する部分について売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や損害賠償請求、代金減額請求などを受けることになります。
風致地区にある物件を売却する方法2選
風致地区を気にしない買主に売却する
風致地区の環境や景観が気に入って購入したいという買主や、厳しい建築制限があっても気にしない買主などを見つけることができれば、売却は可能です。
ただしニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
不動産買取専門業者に売却する
風致地区内の物件は、その厳しい建築制限から「訳あり物件」とみなされ、長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく、そのリスクを納得した買主に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
「風致地区」は自然環境の保全を目的として設定される区域で、一般的に都市計画区域内で、かつ住環境の優れた地域が指定されます。
素晴らしい景色を保つために人の手を加えることが制限され、住宅の外観や庭木の伐採に至るまで、地方自治体による厳しい制限が適用されるのが特徴です。
具体的な制限については、都市計画法に基づき各地方自治体が条例で定めます。例えば福岡市や熊本市の場合は、次の行為をするときには市長の許可が必要です。
- 建築物、その他の工作物の新築、改築、増築、移転
- 宅地の造成、土地の開墾、その他土地の形質の変更
- 木竹の伐採
- 土石の採取
- 水面の埋立て又は干拓
- 建築物等の色彩の変更
- 屋外における土石、廃棄物、又は再生資源の堆積
さらに、風致地区内で上記の行為を行う場合は、以下の制限があります。
- 建物の高さ制限
- 建ぺい率制限
- 外壁後退の制限
- 外壁や屋根の色彩制限
- 土地の植栽の制限
- 土地の形質変更制限
風致地区のメリットは素晴らしい自然環境や景色が保たれていることです。
反面、デメリットとしては土地の形状変更や建築物の建築について厳しい基準が設定されており、住宅の設計やリフォームにおける自由度への影響が大きいことです。
そんな風致地区内にある物件を売却する方法は2つ考えられます。
- 風致地区を気にしない買主に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 風致地区でも検討可能
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
風致地区にある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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