親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。
でも、相続した家は古くて、リフォームも今までされていないし、親の荷物もそのままたくさん残っているし、そのままで売れるのだろうか・・・。
そんなお悩みを持つ方へ・・・不動産は「現況渡し」で売却することも可能です。
ただし、「現況渡し」で売却をするとで、売主に様々なデメリットも発生する可能性がありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 現況渡しとは
- 残置物の扱いについて
- 境界明示について
- 「現況渡し」売主のメリット
- 「現況渡し」売主の2つのリスク
- 不動産を「現況渡し」で売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、不動産の「現況渡し」についての注意点が分かります。
現況渡しとは
不動産を売却する際の現況渡しとは「現状有姿渡し」とも言われます。
中古住宅として売却する場合ではリフォームや修繕などは行わず、そのままの状態で引き渡すことをいいます。
反対語は「リフォーム渡し」となり、文字通り先にリフォームを実施して引き渡す方法です。
また、古家付き土地として売却する場合では建物解体などを行わず、家が建っているままの状態で引き渡すことをいいます。
反対語は「更地渡し」となり、文字通り先に建物を解体して引き渡す方法です。
残置物の扱いについて
残置物は動産ですので、不動産の「現況渡し」の対象には含まれず、残置物は売主にてすべて処分し引き渡すことが一般的です。
もし動産を残置する場合は、引き渡し後のトラブルを防止するためにも「売主は一切の残置物の所有権を放棄し、買主は自己の責任負担にて使用・処分する」旨の特約を入れておく必要があります。
また、照明器具やカーテンレール、表札など物件に取り付けてある動産については、付帯設備表に残置の有無及び故障の有無を記載し、契約時に買主に伝えておくとよいでしょう。
境界明示について
現況渡しの場合でも、境界明示は原則として売主の責任で行なうことが義務付けられています。
境界明示とは、売主自身が境界だと思っているところを伝えるのではなく、隣接地所有者と立ち会ってお互いの境界に対する認識を確認したうえで、境界標がない場合は復元して、土地の範囲を買主に示す行為です。
境界については、別記事にて詳しく説明しています。
売主側で境界復元を行わない場合、「境界非明示での引渡し」である旨の特約を入れておく必要があります。
「現況渡し」売主のメリット
不動産を現況渡しで売却する場合、売主にとっていくつかのメリットがあります。
工事費用を払う必要がない
リフォーム渡しや更地渡しの場合、引き渡し前にリフォーム工事や解体工事を手配しなければならず、それらの費用は売主が負担することになります。
先に工事予算の見積もりを取っていた場合でも、実際に工事に入ってみたら予想外の問題が発生し、当初の見積金額では工事予算が収まらず追加費用が必要となる可能性もあります。
しかし現況渡しの場合、リフォーム工事や建物解体工事を行わずそのままの状態で引き渡すため、工事にかかる費用が不要です。
さらに残置物の所有権放棄の特約や境界非明示の特約を入れての売買であれば、動産処分や境界復元の費用も不要となり、それらの費用は買主が負担することになります。
すぐに売却できる
リフォーム渡しや更地渡しの場合、引き渡し前にリフォーム工事や解体工事を行わなければならないため、それらの工事が完了するまで物件を引き渡すことができません。
しかし現況渡しの場合、リフォーム工事や建物解体工事を行わずそのままの状態で引き渡すため、すぐに物件を引き渡すことができ、売買代金も早く支払いを受けられます。
さらに残置物の所有権放棄の特約や境界非明示の特約を入れての売買であれば、動産処分や境界復元に要する時間も不要となり、なおさら早く物件を引き渡すことが可能です。
「現況渡し」売主の2つのリスク
値下げのリスク
買主側からみた場合、リフォーム工事や解体工事の費用が別途必要となります。
それらの工事には決して安くない費用がかかりますので、その分を考慮し売買価格を相場より安く設定する必要がある、または値引きを要求されるなどの可能性があります。
それ以外にも、動産を残置する場合は買主側がその処分費用を負担する可能性が、境界非明示で売却する場合は買主側が境界復元費用を負担する可能性がそれぞれありますので、その分の値下げリスクも考慮しておくべきでしょう。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
現況渡しの場合、建物や土地について所有者しか知り得ない瑕疵や、インスペクションなどによりプロがしっかり調査・説明しないと買主では発見できない瑕疵が存在する可能性があり、買主がまったく保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、売主から買主に対して「告知義務」があります。
告知事項を売主が買主に説明せず売却した場合は、契約不適合責任を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求、損害賠償請求などを受けることになります。
不動産を「現況渡し」で売却する方法2選
現況渡しを気にしない買主に売却する
リフォーム工事や建物解体工事の費用を自分で負担することも納得のうえで、現況渡しで物件を購入したいという買主などを見つけることができれば、売却は可能です。
ただし前述したように大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
不動産買取専門業者に売却する
現況渡しの物件は一般のお客様の中から買い手を探すとなると、前述したように買主側からみた場合、リフォーム工事や解体工事の費用が別途必要となるため、物件の立地条件次第では長期間に渡り買い手が見つからない可能性があります。
運よく現況渡しで物件を購入したいという買主を見つけることができた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却までに時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に残置物の所有権放棄の特約、境界非明示の特約および売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
現況渡しとはリフォームや修繕、建物解体などを行わず、物件をそのままの状態で引き渡すことをいいます。
動産は不動産の現況渡しの対象には含まれず、残置物は売主にてすべて処分し引き渡すことが一般的ですが、特約を入れることで動産も残置したまま物件を引き渡すことが可能です。
また、境界明示は原則として売主の責任で行なうことが義務付けられていますが、特約を入れることで境界非明示で引き渡すことも可能です。
現況渡しは売主にとって費用がかからず早期に売却できるというメリットがある反面、注意しなければならないリスクが2つあります。
- 値下げのリスク
- 契約不適合責任のリスク
これらを踏まえて、現況渡しで物件を売却する方法は2つあります。
- 現況渡しを気にしない買主に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 現況渡し、動産残置、境界非明示でも検討可能
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
現況渡しの物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
コメント