境界の種類
土地の境界には「筆界」と「所有権界」があります。
筆界
「筆界」とは土地が登記されたときに定められたもので、不動産登記法によりその土地の範囲を区画する公法上の境界のことをいいます。
隣接する所有者同士の話し合いで「筆界」を変更することはできず、合筆や分筆などの登記によってのみ変更が可能です。
特に分筆登記を行う場合には、分筆対象土地の区画を正確に把握するために隣地所有者と筆界確認を行い、「筆界確認書」を作成して法務局へ提出しなければなりません。
所有権界
「所有権界」とはその名の通り、その土地の民法による所有権の範囲を示す私法上の境界のことをいいます。
隣接する所有者同士の話し合いで変更することが可能です。
境界立会とは、この「筆界」と「所有権界」が一致しているかどうかを確認する作業となります。
隣地所有者から境界立会を拒否された場合の解決方法4選
隣地所有者から境界立会を拒否された場合の解決方法は、立ち会いを拒否される理由によって異なってきます。
隣地所有者が忙しく、現地にて立ち会う時間が確保できないケース
この場合は、僕自身が次のような手順の方法で解決したことがあります。
① 土地家屋調査士の先生が境界立会書・現況測量図面・境界写真などを隣地所有者へ郵送
② 電話にて隣地所有者から境界に関する認識などをヒアリング
③ 土地家屋調査士から現地の状況も電話にてご説明
④ 境界についてご納得いただき、署名捺印済みの境界立会書を返送していただく
「筆界」と「所有権界」が一致していれば、この方法でも問題なく進む可能性は高いと思われますが、依頼する土地家屋調査士の先生とよくご相談されて下さい。
隣地所有者が遠方におり、現地まで来ることができないケース
このような場合、単純に時間的な都合であれば上記の方法で解決が可能と考えられます。
しかし僕の経験で、隣地所有者が「交通費を負担してまで境界立会に行きたくはないが、現地を確認しないまま承諾はしない」といったケースがありました。
その時はどうしても隣地所有者に境界を確認していただく必要があったため、次のような手順の方法で解決しました。
① 隣地所有者が現地に来る場合の費用は立会依頼者が負担する旨をお約束
② 隣地所有者が現地に来る日程に合わせて、境界立会のスケジュール調整
③ 実際に現地にお越しいただき立会いをし、かかった交通費は立会依頼者が全額負担
通常、土地家屋調査士の先生が間に入って調整されると思いますので、この方法で対応が可能か否かは、依頼する土地家屋調査士の先生とよくご相談されて下さい。
相続未了のため隣地所有者が未定、または行方が不明なケース
僕の経験で、隣地所有者は亡くなっており相続が発生、しかしその相続人たちの間で遺産分割協議が整わず、相続が完了しないため立会をしてもらえなかったケースがありました。
このような場合、次のような手順の方法で解決したことがあります。
① 1点の境界で当該隣地と対象土地の両方に接する土地所有者ら全員と立ち会い
② 当該隣地と対象土地間のすべての境界点の筆界および所有権界について、立会者全員の認識が一致
③ 土地家屋調査士の先生が法務局へ事情を説明したところ、「すべての隣地所有者と立会をしたとみなしてもよい」との見解
④ そのため、当該隣地との立会は省略
隣地所有者の現住所がどうしても分からず連絡の取りようがない場合も、同様の対応をしたことがあります。
ただし、この方法で対応が可能か否かは土地の形状・境界の位置や法務局の見解にもよりますので、依頼する土地家屋調査士の先生へよくご相談されて下さい。
筆界特定制度を利用するケース
上記のようなケース以外で立会を拒否される場合は、所有者同士で過去に何らかのトラブルがあり心情的に拒否されている可能性があります。
その理由を聞きだすことができれば対応のしようがありますが、それすらも分からない場合は「筆界特定制度」という方法があります。
「筆界特定制度」とは、登記官が専門家による調査をふまえて、もともとあった「筆界」を公的な判断で明らかにし、土地の「筆界」の位置を特定する制度です。
裁判をすることなく「筆界」の問題を解決できる可能性がありますが、「所有権界」を特定するものではないため、筆界特定の結果に納得できない場合は裁判で争うことになります。
なお、筆界特定には通常の測量作業以上に時間と費用がかかります。
まとめ
隣地所有者が境界立会に来てもらえない場合、まずはその理由を明らかにすることをおすすめいたします。
理由が分かれば、土地家屋調査士の先生と相談のうえ、その理由に合わせた対応策を取ることも可能だからです。
理由が分からない場合でも「筆界特定制度」を利用することで、裁判を行わずとも筆界を特定できる制度もあります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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