親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家に「シロアリの被害」はありませんか?
一般的に、シロアリ被害がある物件を売却することは難しい場合が多いので、「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、
- 家とシロアリの関係
- シロアリの被害がでやすい場所
- シロアリ被害がある場合のデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- シロアリ被害がある家を売却する方法4選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
これを読めば、なかなか売れないシロアリ被害物件でも、売却する出口が見つかります。
家とシロアリの関係
日本は木造住宅が多い国です。
林野庁のデータによると、令和3年時点で新設住宅着工戸数に占める木造住宅の割合は、全体の51%を占め、特に一戸建て住宅に限定すると、実に91%を占めるそうです。
そして、その木造住宅の天敵ともいえるのが、シロアリです。
公益社団法人日本しろあり対策協会によると、日本には22種類のシロアリが生息しているそうですが、建築物に被害を加えるシロアリは、主に「ヤマトシロアリ」と「イエシロアリ」の2種類です。
「ヤマトシロアリ」は北海道北部を除く日本全域に分布しており、湿気の多いところを好みます。そのため、その被害は木部の腐食と同時に起こることが多く、主に床下など建物の下部に被害を与えます。
「イエシロアリ」は千葉県以西の海岸線沿いなど温暖な地域に分布しています。建物内部に塊状の大きな巣をつくるため、被害の広がる速度が速く、被害程度も激烈です。乾燥した場所でも水を運びながら加害していくため、被害は家全体に及ぶ可能性があります。
シロアリの被害がでやすい場所
一般的にシロアリの被害がでやすい場所として、僕自身が中古住宅を調査する際に特に気をつけて確認する個所は次のとおりです。
床下
シロアリは光や乾燥が苦手なので、地中から暗く湿気のある床下の基礎や束石、束柱に蟻道をつくり侵入してきます。
そのため、普段は人目につかず、知らないうちに被害が進行していることが多いのです。
床下はもっとも注意すべき個所です。
陽が当たらない外部の基礎
床下だけではなく、外部においても陽が当たらず湿気のある場所であれば、基礎に蟻道をつくりシロアリが浸入することがあります。
また、基礎の近くに植木鉢や木材・廃材などを放置している場合、さらにシロアリが侵入しやすくなりますので注意が必要です。
水回り(特に浴室)
水回りは湿気が多いためシロアリが好む箇所ですが、特に浴室は要注意です。浴室入口周りの建具枠に小さな穴がいくつか見られれば、シロアリに加害されている可能性があります。
特に在来工法の浴室の場合、タイルのひび割れや目地の亀裂などがあれば、そこから水が入り込むことで木材を湿らせ、シロアリに加害される可能性が高くなります。
また、浴室の窓回りも、水が侵入しやすくシロアリが好みますので要注意です。
玄関、勝手口
玄関ポーチの柱が束石を使わず直接土壌に立っている場合、ポーチ柱の内部をシロアリが加害している可能性があります。
また、玄関サッシや勝手口サッシ周りの建具枠に小さな穴がいくつか見られれば、シロアリに加害されている可能性があります。
さらに、古い住宅は框部分の立ち上がりにコンクリートブロックを使用していることも多く、コンクリートブロックの穴からシロアリが侵入し框部分を加害していることもあります。
和室
畳はシロアリがよく蟻道をつくりますので、畳を上げてみて、裏側に蟻道がないか確認する必要があります。
雨漏り個所
雨漏りをしている個所があれば、そこから雨水が侵入し木材を湿らせ、シロアリが加害しやすくなります。
雨漏り個所の下にある柱や梁、筋交い、間柱などは要注意です。
雨漏り被害がある物件については、別記事にて詳しく説明しています。
壁が膨らんでいる個所
イエシロアリの場合、家の中にも巣をつくります。
壁が不自然に膨らんでいる場合、壁の中にイエシロアリの巣ができている可能性があります。
天井裏
イエシロアリは自分で水分を運び、途中で巣をつくりながら加害していくため、比較的地面から離れた高さにまで被害が及びます。
天井裏にイエシロアリの巣ができていることも決して珍しくはありません。
建具の建て付けが悪い個所
建具の建て付けが悪く閉まらない、または閉めても隙間が空くなどの現象がある場合、建物自体の歪みや傾きの可能性もありますが、土台をシロアリに加害され床が下がっている可能性もあります。
シロアリ被害がある場合のデメリット
家の構造上主要な部分(土台や柱、梁など)がシロアリの被害を受けてしまうと、建物の強度が著しく低下し、被害個所の補修や家屋の解体が必要になる可能性がありますので、どうしても売却をする際に価格が安くなることが多くなります。
また、一般のお客様に売却しようとしても、シロアリ被害があることを嫌って、購入自体を断られてしまうケースも考えられます。
契約不適合責任のリスク
「契約不適合責任」とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
シロアリ被害は、建物の内部で発生することがほとんどなので、外から判別することが容易ではなく、「物理的瑕疵」に該当します。
当然ながら、売買契約時に買主がシロアリ被害を自力ですべて発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、「契約不適合責任」が民法に定められているわけです。
シロアリ被害があることを売主が買主に告知せず売却した場合、「契約不適合責任」を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受けることになります。
シロアリ被害がある家を売却する方法4選
売却をする前に、まずはシロアリ業者による点検を行った方が確実です。
シロアリ業者に相談する際は、1社だけでなく数社に見積もりを取ることをオススメします。
シロアリ被害が少ないうちに売却する
シロアリ業者に調査をしてもらった結果、まだシロアリの被害が軽微であれば、被害が拡大する前に売却をすることは、ひとつの方法です。
その際は、買主にも被害の状況をしっかり説明しておくことをオススメします。
専門業者に頼んで予防工事まで実施しておけば、より一層買主の安心感も増し、スムーズな売却につながる可能性も高いと思います。
被害を補修して売却する
シロアリ被害があるものの、まだ補修が可能な場合に、自分で被害部分の補修をし、建物のダメージを回復して売却することも、ひとつの方法です。
工事に費用はかかりますが、シロアリ被害を理由とした値下げを回避できる可能性があります。その際は、被害個所の状況と補修方法を買主にもしっかり説明しておくことをオススメします。
施工前と施工後の写真を撮っておけば、より一層買主の安心感も増し、スムーズな売却につながる可能性も高いと思います。
建物を解体して更地で売却する
シロアリ被害が甚大であり、補修するにも過分の費用が発生するような場合は、建物を解体してしまい、更地にして販売するということも、ひとつの方法です。
もちろん解体工事には相当の費用がかかりますが、特にイエシロアリの場合など、被害状況によっては「補修するよりも、解体した方が費用が抑えられる」という可能性があります。
なお、解体工事業者に相談する際は、1社だけでなく数社に見積もりを取ることをオススメします。
建物を解体してしまえば、契約不適合責任の対象となる建物が存在しないため、売主にとっても安心です。ただし注意点として、土地についての契約不適合責任まで無くなるわけではありません。
また、再建築不可物件の場合、既存の建物を解体してしまうと建て直しができなくなります。建物を解体する場合は、よく検討してから依頼することをオススメします。
再建築不可物件については、別記事にて詳しく説明しています。
不動産買取専門業者に売却する
一般のお客様の中から買い手を探すとなると、前述したようにシロアリ被害の補修に費用がかかる可能性があり、また、売却まで数ヶ月以上の時間を要することも珍しくありません。
そのうえ、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「補修に費用がかかり、売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
不動産買取専門業者が買取する場合、シロアリ被害はそのままの状態で売却できる可能性があり、補修の費用がかかりません。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、また、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
家の売却を考える際に、シロアリ被害があるかどうかを調べることはとても重要です。まず、専門業者にしっかり確認してもらうことをオススメします。
そして、シロアリ被害がある場合には、売却にあたり4つのリスクが考えられます。
- 売買代金が安くなる
- 購入を断られる
- 成約までに数ヶ月以上の時間がかかる
- 売却後も契約不適合責任を負う
また、シロアリ被害のある家を売却する方法は4つ考えられます。
- 被害が少ないうちに売却する → 予防工事を実施する場合、費用が発生します。
- 被害個所を補修して売却する → 補修工事の費用が必要となります。
- 解体して更地で販売する → 建物解体工事費用が必要となります。
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 被害個所の補修が不要
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
シロアリ被害がある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが、最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
コメント