親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は1981年5月31日以前に建てられていませんか?
1981年5月31日以前に建てられた「旧耐震基準物件」を売却することは、いわゆる新耐震基準物件を売却するより難しい可能性があります。
そこで、「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 旧耐震基準物件とは何か
- 既存不適格物件とは何か
- 旧耐震基準物件の3つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 旧耐震基準物件を売却する方法5選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない旧耐震基準物件でも、売却する方法が見つかります。
旧耐震基準物件とは何か
耐震基準は、建築基準法によって定められています。
1981年(昭和56年)6月1日から現在まで適用されている「震度6強~7までの揺れでも、建物が倒壊・崩壊しない」基準のことを「新耐震基準」といいます。
そして新耐震基準以前に適用されていた「震度5強程度の揺れまでなら、建物が倒壊・崩壊しない」耐震基準のことを「旧耐震基準」といい、1981年5月31日以前に建てられた家は、「旧耐震基準物件」となります。
なお、新築(完成)時期は1981年6月1日以降の建物の場合でも、建築確認を取得したのが1981年5月31日以前である場合は、旧耐震基準で設計・建築されており旧耐震基準物件となりますので注意が必要です。
既存不適格物件とは何か
「既存不適格物件」とは、建物の建築時には適法だったものの、その後の建築基準法やその他の法令、条例の改正を受けて不適法になってしまった建築物のことをいいます。
木造住宅については、2000年(平成12年)にも建築基準法が改正され、「2000年基準(新・新耐震基準)」が制定され、現在に至ります。
そのため木造住宅に限りますが、1981年6月1日から2000年5月31日までに建築確認を取得した建物は、新耐震基準で建築されていますが現行の耐震基準を満たしていない場合が多く、その場合「既存不適格物件」となります。
もちろん、旧耐震基準物件も建築当時は適法に建築されているため、同じく「既存不適格物件」です。
旧耐震基準物件の3つのデメリット
耐震性に不安がある
旧耐震基準物件や既存不適格物件の一番のデメリットは、なんといっても耐震性に不安があることです。
1995年1月に発生した阪神・淡路大震災において、亡くなった6,434人の死因の9割が住宅などの倒壊による圧死であり、さらに、被災した木造住宅の98%は旧耐震基準物件だったといわれています。
この数字だけでも、特に旧耐震基準物件は耐震性不足によるリスクが高いことが分かります。
旧耐震基準物件を一般のお客様に売却しようとしても、耐震性に不安を感じ、購入自体を断られてしまう可能性も考えられます。
住宅ローン減税が利用できない
住宅ローン控除を受ける条件として以前は、新築後20年以上経過している住宅については、耐震基準適合証明書の発行が必要となる場合がありました。
しかし2022年度の税制改革により、1982年(昭和57年)1月以降に新築された住宅については、耐震基準適合証明書の発行が不要となりました。
しかし旧耐震基準物件や、新耐震基準物件でも1981年6月1日~1981年12月31日に新築された物件の場合、税制改革前と同じく耐震基準適合証明書の発行が必要となります。
耐震基準適合証明書を発行するためには、建築士などへ依頼し、耐震診断を実施する必要があります。
そして耐震診断の結果、耐震性の不足が判明した場合、耐震補強工事を実施しなければなりません。
当然ながら耐震診断、耐震補強工事、耐震適合証明書の発行には相当の費用がかかります。
1982年1月以前に建てられた物件を一般のお客様に売却しようとしても、住宅ローン減税が適用できないことを理由に、耐震診断や耐震補強工事の実施を求められるケースや、購入自体を断られてしまうケースが考えられます。
住宅ローンが利用できない場合がある
旧耐震基準物件の場合は、「フラット35」という住宅ローンを利用する場合、フラット35適合証明書の発行にあたり、耐震評価基準などに適合しているかの検査が必要となります。
検査の結果、耐震評価基準を満たしていない場合、耐震補強工事の実施を求められるケースや、購入自体を断られてしまうケースが考えられます。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に契約内容に適合していない部分がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
旧耐震基準物件や既存不適格物件は「法的瑕疵」に該当します。さらに旧耐震基準物件は1981年5月31日以前に建てられ築年数が古い物件が多く、雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
これらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、買主がまったく保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められているわけです。
旧耐震基準物件や既存不適格物件であることを買主へ告知せず売却した場合は、契約不適合責任を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受けることになります。
「物理的瑕疵」がある物件、「既存不適格物件」の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
旧耐震基準物件を売却する方法5選
耐震診断を実施して売却する
耐震診断を実施した結果、現行の耐震基準を満たす物件と診断されれば、普通の不動産として売却可能です。
その際は、買主へ耐震診断の内容を説明する必要があります。
耐震補強工事を実施して売却する
耐震診断を実施した結果、現行の耐震基準を満たさない物件と診断された場合、耐震補強工事を行い現行の耐震基準を満たす物件にすれば、普通の不動産として売却可能です。
ただし、耐震補強工事をするためには壁、床、天井を解体し、耐震金物や筋交い、耐力壁などの設置や基礎の補強などを行う必要があるため、相当の費用がかかることが予想されます。
旧耐震基準物件であることを気にしない買主を見つける
「購入後自分でリノベーションを希望しており、その時に一緒に耐震補強工事も行う予定なので、旧耐震基準物件でも構わない」という買主を見つけることができれば、売却できるかもしれません。
ただし、耐震補強工事にかかる費用として大幅な値下げが必要となるリスクや、そもそも買主が見つからないというリスクは覚悟しておくべきでしょう。
建物を解体して更地で売却する
建物を解体してしまい、更地にして販売するということも、ひとつの方法です。
もちろん解体工事には相当の費用がかかりますが、「耐震補強工事をするくらいなら、かえって新築した方がいい」という場合もあります。
解体工事業者に相談する際は、1社だけでなく数社に見積もりを取ることをオススメします。
契約不適合責任の対象となる建物が存在しないため、売主にとっても安心です。ただし、土地についての契約不適合責任まで無くなるわけではないため、ご注意下さい。
不動産買取専門業者に売却する
「旧耐震基準物件」の物件は、前述の3つのデメリットからいわゆる「訳あり物件」とみなされ、一般の買主から敬遠され長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
または現行の耐震基準に適合するように耐震補強工事をして売却した場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、または耐震補強工事をするための手間と費用と時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
1981年5月31日以前に建てられた家は、「旧耐震基準」物件となります。
- 「旧耐震」とは、震度5強程度の揺れまでなら、建物が倒壊・崩壊しない基準
- 「新耐震」とは、震度6強~7までの揺れでも、建物が倒壊・崩壊しない基準
また、木造住宅に限りますが、1981年6月1から2000年5月31日までに建築確認を取得した建物は、新耐震基準で建築されていますが現行の耐震基準を満たしていない場合が多く、その場合「既存不適格物件」となります。
旧耐震基準物件のデメリットは主に3つです。
- 耐震性に不安がある
- 住宅ローン減税が利用できない
- 住宅ローンが利用できない場合がある
そして、旧耐震基準物件を売却する方法は5つ考えられます。
- 耐震診断を実施して売却する
- 耐震補強工事を実施して売却する
- 旧耐震基準物件であることを気にしない買主を見つける
- 建物を解体して更地で売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 耐震診断や耐震補強工事が不要
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
旧耐震基準物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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