親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は農村地域にありませんか?
一般的に、農村地域のような市街化調整区域の物件を売却することは難しい場合が多く、さらに物件が「分家物件」である場合、なおさら売却することは難しい可能性があります。
そこで、「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、600件以上の売買経験をもとに、
- 分家住宅とは何か
- 分家住宅の5つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 分家住宅を売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
これを読めば、なかなか売れない分家住宅でも、売却する方法が見つかります。
分家住宅とは何か
市街化調整区域内において、農業や漁業、林業を営んでいる本家のことを、都市計画法第29条第1項第2号に定める「農家住宅」といいます。
市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域又は準都市計画区域内において行う開発行為で、農業、林業若しくは漁業の用に供する政令で定める建築物又はこれらの業務を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行うもの
都市計画法第29条第1項第2号
市街化調整区域内の物件については、別記事にて詳しく説明しています。
「分家住宅」とはその農家住宅である本家からから世帯が分かれて、分家としての世帯が新たに建てた住宅のことです。
農家住宅と違い、分家住宅は都市計画法で直接に定められてはおらず、都市計画法第34条第12号を受けて、各自治体が条例にて要件を定めています。
開発区域の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において行うことが困難又は著しく不適当と認められる開発行為として、災害の防止その他の事情を考慮して政令で定める基準に従い、都道府県の条例で区域、目的又は予定建築物等の用途を限り定められたもの
都市計画法第34条第12号
- 本家世帯と同じ世帯または同じ世帯だった者が申請者であること
- 本家世帯の3親等以内の血族であること
- 本家世帯から相続・贈与・使用貸借された土地であること
- 持ち家がなく、社会通念に照らし、住宅を必要とする合理的な理由があること など
これらの要件は一例ですが、分家住宅を建てるには非常に細かい要件をクリアする必要があります。
分家住宅の5つのデメリット
属人性が強い
分家住宅を建てる要件を見ても分かるとおり、分家住宅は非常に「属人性」が強く、分家住宅を使用できる人は分家住宅建築の許可を受けた本人と、その配偶者及び直系卑属(子や孫)に限定されます。
そのため分家住宅を売却する場合、自治体から一般住宅への用途変更の許可(都市計画法第42条第1項ただし書き許可)を受ける必要があります。
何人も、開発許可を受けた開発区域内においては、第三十六条第三項の公告があつた後は、当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物又は特定工作物を新築し、又は新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物としてはならない。ただし、都道府県知事が当該開発区域における利便の増進上若しくは開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認めて許可したとき、又は建築物及び第一種特定工作物で建築基準法第八十八条第二項の政令で指定する工作物に該当するものにあつては、当該開発区域内の土地について用途地域等が定められているときは、この限りでない。
都市計画法第42条第1項
この用途変更の許可を受けるには、自治体により異なりますが、
- 売主が10年以上居住している
- 売主が売却することに社会通念上やむを得ない事情がある
- 用途変更後は自己の居住用として使用する
などの要件が求められます。
売却前に売主が用途変更の許可を受けておかないと、購入した第三者は建替えどころか使用もできません。
また、分家住宅は「再建築不可物件」となるため、売却はかなり難しいでしょう。
再建築不可物件については、別記事にて詳しく説明しています。
インフラ環境が整っていない
分家住宅が建つ市街化調整区域は、そもそも一般の人が多く住むことを想定した地域ではありません。
そのため、下記のようにインフラ環境が整っていないことも多く、個人でそれらのインフラを整えるのは容易ではありません。
- 上水道が整備されておらず、井戸を使用している
- 下水道が整備されておらず、浄化槽や汲み取り式便槽を使用している
- 都市ガスが整備されておらず、プロパンガスを使用している
そのため、一般の買主からは購入を避けられるケースも多いです。
生活利便性が悪い
市街化調整区域は主に農村地帯であることが多く、また、建物を建てることができない地域のため、日常生活に必要な商業施設も原則として建てられません。
- コンビニやスーパー
- 学校や病院
- 駅や娯楽施設
といった施設が近くにないという場合が多く、それらの施設を利用したい場合、離れた場所まで出かけて行く必要があり、生活の利便性が悪いです。
この点も一般の買主から購入を避けられる理由として挙げられます。
地目が農地になっている場合、手続きが面倒
分家住宅が建つ市街化調整区域は主に農村地帯であることが多く、まれに地目が「宅地」ではなく「畑」などの農地のまま、家が建っていることがあります。
農地に家を建てるには、農地を宅地に変更する「農地転用許可」の手続きが必要です。
地目が農地のままですでに家が建っている場合、その農地転用許可を受けたものの、その後に「地目変更登記申請」を怠っている可能性があります。
このケースでは、まず農業委員会へ「現況証明願」の手続きをしたうえで、土地家屋調査士へ「地目変更登記」申請の依頼をする必要があり、手間と費用がかかります。
なお、かなり稀なケースだと思いますが、農地転用許可の履歴がない場合は、違反建築の可能性がありますので、ご注意下さい。
違反建築物件については、別記事にて詳しく説明しています。
住宅ローンを利用できない可能性がある
分家住宅についてはその属人性の強さから、金融機関から資産価値が低いと判断され、担保評価が低くなり、購入時に住宅ローンを利用できない可能性があります。
そのため、一般の買い手はおそらく購入の検討は難しいでしょうし、不動産業者も積極的に分家住宅をお客様へ紹介することは少ないと思います。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に契約内容に適合していない部分がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
分家住宅は再建築不可物件となるため「法的瑕疵」に該当しますが、プロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない場合もあるため、買主がまったく保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵があることを売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や損害賠償請求などを受けることになります。
分家住宅を売却する方法2選
再建築できなくても気にしない現金客に売却する
売主が分家住宅から一般住宅へ用途変更の許可を受けたうえで、住宅ローンを利用しない現金購入の方で、かつ、再建築をするつもりもない、という買主を見つけることができれば、売却できるかもしれません。
ただし用途変更の許可申請を行政書士に依頼した場合、費用がかかります。
そこまでしても需要の少なさ故に、大幅な値下げが必要となるリスクや、そもそも買主が見つからないというリスクは覚悟しておくべきでしょう。
不動産買取専門業者に売却する
分家住宅は前述の5つのデメリットからいわゆる「訳あり物件」とみなされ、一般の買主から敬遠され長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく、再建築できないことを気にしない現金購入客に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「用途変更の許可に費用がかかり、売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の「契約不適合責任」が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
市街化調整区域内において、農業や漁業、林業を営んでいる本家のことを「農家住宅」といい、「分家住宅」とはその農家住宅である本家からから世帯が分かれて、分家としての世帯が新たに建てた住宅のことです。
分家住宅のデメリットは下記の5つが考えられます。
- 属人性が強い
- インフラ環境が整っていない
- 生活利便性が悪い
- 地目が農地になっている場合、手続きが面倒
- 住宅ローンを利用できない可能性がある
そして、分家住宅を売却する方法は2つ考えられます。
- 再建築できなくても気にしない現金客に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは3つあります。
- 短期間で売却できる
- 仲介手数料が不要
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
分家住宅は一般的に売却することが難しいですが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、物件買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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