親が亡くなり、実家が空き家となった。売却するためには相続の手続きが必要だと聞いたけど、「遺言」がある場合どのように進めたらいいのか分からない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、
- 遺言とは
- 遺言書の種類
- 相続とは
- 相続登記
- 遺言相続の手続きの流れ
を、不動産業者目線で解説します!
これを読めば、「遺言書がある場合」の不動産相続手続きの流れが分かります。
遺言とは
「遺言」とは、遺言者が生涯をかけて築き、かつ、守ってきた大切な財産を最も有効・有意義に活用してもらうために、「自分の死後、どの財産を誰に、どのような形で、どれだけ渡すか」という意思表示をするものです。
民法で定める相続の配分(法定相続)と異なる形での相続を生前に希望するときに、その意思を「遺言書」として書面で残すことで、財産が自分の希望どおりに分配され、相続をめぐる親族間での争いを防止できるなどの効果が期待できます。
特に不動産は分割しづらく相続においてトラブルになりやすいため、「遺言書」があるとその後の手続きがスムーズです。
似た言葉で「遺書」がありますが、「遺書」は、亡くなる前の自分の気持ちなどを伝える私的な文書であり、「遺言書」のような法的な効力はありません。
遺言書の種類
遺言には、公証人を筆者とする「公正証書遺言」、本人を筆者とする「自筆証書遺言」、筆者が不特定の「秘密証書遺言」の3種類があります。
公正証書遺言
「公正証書遺言」とは、遺言者本人が公証人と証人2人の前で遺言の内容を口頭で告げ、その内容が遺言者の真意であることを公証人が確認して文章にまとめたものです。
法律を熟知した公証人によって作成されるため形式不備で遺言が無効になるおそれもなく、公証役場で保管もしてもらえるので隠匿や紛失などのリスクも低いため、他の種類の遺言と比べ確実性が高い遺言の方法です。
また、公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要ですので、相続の開始後速やかに遺言の内容を実現することができます。
反面、公証人手数料令という政令で法定されている手数料が必要になるというデメリットがあります。
自筆証書遺言
「自筆証書遺言」とは、遺言者本人が自ら遺言書の全文、遺言書の作成日付および氏名を自書し、押印して作成する遺言書です。自分で手書きすればよいので費用がかからず、証人も不要なので手軽で自由度の高い遺言の方法です。
ただし、原則として全文が自書である必要があるため、他の人が代筆した場合やパソコンで作成されている場合は、無効となります。病気等で手が不自由になり字が書けなくなった場合は、利用することができません。
また、「自筆証書遺言」は、その遺言書を発見した者が、家庭裁判所にこれを持参し、その遺言書を検認するための手続を経なければならず、遺言の執行までに時間がかかります。
さらに、「自筆証書遺言」には下記のようなリスクがあります。
- 遺言書に不備がある場合、後に紛争の種を残したり、法的に無効になるリスク
- 遺言者が周囲の人に自筆証書遺言の存在を知らせていなかった場合、遺言書を発見されなかったり、紛失したりするリスク
- 自筆証書遺言を自宅で保管していた場合、故意に破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりするリスク
法務局による「自筆証書遺言保管制度」を利用すれば、遺言書を法務局で保管してもらうことができ、紛失やこれを発見した者による破棄、隠匿、改ざん等のリスクを防止することができます。また、家庭裁判所における検認の手続も不要となります。
ただし、「自筆証書遺言保管制度」を利用するためには、通常の自筆証書遺言ではなく、法務省令で定める様式に従って作成した無封の自筆証書遺言である必要があります。
「秘密証書遺言」
「秘密証書遺言」とは、「遺言内容を秘密」にしたまま、公証人と証人2人に「遺言書の存在」の証明をしてもらうことができる遺言の方法です。
遺言者本人が遺言を書いていたかどうかわからない場合、公証役場に問い合わせれば遺言の有無(存在)が確認できるため、遺言者の死後、遺言書が発見されないケースを防ぐことができます。
「自筆証書遺言」と異なり、自書である必要はなく、パソコン等を用いて文章を作成しても、第三者が筆記したものでも、差し支えありません。
「秘密証書遺言」にも「自筆証書遺言」と同様に下記のようなリスクがあります。
- 遺言書に不備がある場合、後に紛争の種を残したり、法的に無効になるリスク
- 遺言者が周囲の人に自筆証書遺言の存在を知らせていなかった場合、遺言書を発見されなかったり、紛失したりするリスク
- 秘密証書遺言を自宅で保管していた場合、故意に破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりするリスク
相続とは
「相続」とは、亡くなった人が所有していた財産や権利義務を、配偶者や子、親族などが引き継ぐことです。相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
相続には「遺言相続」と「法定相続」の2つの方法があり、原則として「遺言相続」が「法定相続」に優先されます。
遺言相続
相続においては「遺言者の意思」が最優先されるため、遺言書がある場合は「遺言相続」が「法定相続」に優先され、遺言書で指定された相続人が不動産を相続します。
法定相続
遺言書が無い場合は「法定相続」が適用され、民法で定められた法定相続人が不動産を相続することになります。基本的には被相続人(=亡くなった人)の配偶者と子ですが、子がいない場合は親や兄弟姉妹も相続人となり得ます。
相続が発生したときに相続人が1人であれば、法定相続持ち分もありませんので、その相続人がそのまま単独で相続します。しかし相続人が複数人いるときは、基本的に不動産はすべての法定相続人による共有状態となります。
この共有状態のまま不動産を相続することも可能ですが、共有名義の不動産は、維持管理の面や売却などの場合に共有者同士で意見が合わず、トラブルに発展することが少なくありません。
さらに、他の相続人が人数が多い場合や遠方にいる場合などで、その他の相続人も亡くなりさらに相続が発生している場合などは、手続きがより煩雑になりトラブルの可能性も高くなるため注意が必要です。
法定相続については、別記事にて詳しく説明しています。
相続登記
「遺言相続」と「法定相続」のどちらのケースでも、相続人が決まったら、その不動産の名義を相続人の名義に変更する「相続登記」を、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
ちなみに、令和4年度国土交通省調べによるデータによるとわが国には、相続が発生したにもかかわらず相続登記がされていないため、登記簿をみても所有者が分からない「所有者不明土地」が、国土の約24%も存在しているそうです。
それらの「所有者不明土地」の解消を目指し、2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。そのため、相続登記を行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
相続登記義務化については、別記事にて詳しく説明しています。
遺言相続の手続きの流れ
検認
「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の場合は、まず遺言書を探すところから始まります。「秘密証書遺言」の場合は、公証役場に問い合わせれば遺言書の有無を確認することが可能です。
見つかった遺言書は、相続登記の際にそのまま添付書類として使用できません。「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」を添付書類とするためには、必ず家庭裁判所での「検認」の手続きが必要になります。
ただし、「自筆証書遺言」について法務局による「自筆証書遺言保管制度」を利用していれば、家庭裁判所での「検認」の手続きは不要です。また、「公正証書遺言」の場合も検認は不要です。
遺言書が無効の場合
「検認」の結果、遺言書が無効になった場合は「遺産分割協議」によって相続の方法を決定します。
「遺産分割協議」において、どの不動産を誰が引き継ぐかを決定します。そしてその内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印で押印します。
なお、相続人が一人でも欠けた状態でなされた分割協議は無効となります。
遺言書の内容に納得ができない場合
公正証書遺言の内容に納得ができない場合も、相続人全員で「遺産分割協議」を行い、全員の同意が得られれば、遺言内容とは異なる相続人が不動産を取得することが可能です。
なお、遺言書により財産を分与される受遺者(法定相続人以外の人)、遺言執行者が指定されている場合は、その方も含めて協議が必要です。
ただし、遺言で遺産分割協議が禁止されている場合は、遺産分割協議をすることはできません。
遺言書に不動産についての記載がない場合
被相続人が不動産を所有していたのにもかかわらず、不動産の相続について遺言書で特に記載のない場合も、相続人の間で「遺産分割協議」を行い、どの不動産を誰が引き継ぐかを決定します。
相続登記申請
不動産の相続人が必要書類を準備し、法務局へ相続登記申請をします。これで相続の手続きは完了です。
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されたため、相続登記を行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性があります。また、相続した不動産を売却する場合も、必ず相続登記をしなければなりません。
早めに相続登記の手続きを行うことをオススメします。
相続登記義務化については、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
「遺言」とは、遺言者が自分の死後、どの財産を誰に、どのような形で、どれだけ渡すかという意思表示をするものです。
「遺言」には、次の3種類があります。
- 公正証書遺言
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
「相続」とは、亡くなった人が所有していた財産や権利義務を、配偶者や子、親族などが引き継ぐことです。
「遺言相続」と「法定相続」の2つの方法があり、遺言書がある場合は原則として「遺言相続」が優先されます。
最後に、相続手続きの流れは以下の通りです。
1.検認
2.必要に応じ遺産分割協議
- 遺言書が無効の場合
- 遺言書の内容に納得ができない場合
- 遺言書に不動産についての記載がない場合
3.相続登記申請
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されたため、相続登記を行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性があります。また、相続した不動産を売却する場合も、必ず相続登記をしなければなりません。
早めに相続登記の手続きを行うことをオススメします。なお、相続登記のコスト・時間・手間を抑えたい場合は、相続不動産専門の名義変更webサービスの利用が便利です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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