親が亡くなり、実家が空き家となった。売却するためには相続の手続きが必要だと聞いたけど、「遺産分割協議」をどのように進めたらいいのか分からない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が、
- 相続とは
- 相続人調査とは
- 法定相続とは
- 遺産分割協議とは
- 相続登記をする
- 遺産分割協議による相続の手続きの流れ
を、不動産業者目線で解説します!
これを読めば、「遺産分割協議」による不動産相続手続きの流れが分かります。
相続とは
「相続」とは、亡くなった人が所有していた財産や権利義務を、配偶者や子、親族などが引き継ぐことです。相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
不動産の相続が発生したら、遺言書があるかどうかをまず確認します。遺言書がある場合は、「遺言による相続」となります。
遺言については、別記事にて詳しく説明しています。
遺言書が無い場合は、「法定相続」や「遺産分割協議」などの手続きを進めるために、まず「相続人調査」をする必要があります。
相続人調査とは
「相続人調査」とは、遺言書が無い場合に、不動産の法定相続や遺産分割協議などの手続きを進めるために「相続人は誰なのか」を調べて確定することをいい、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍を取り寄せ調査をします。必要となる戸籍の種類は下記の通りです。
戸籍謄本
戸籍は、夫婦と未婚の子によって構成されます。 「戸籍謄本」は、故人だけでなく、その戸籍に入っている全員の名前や生年月日、身分関係などを証明する書類です。「戸籍全部事項証明書」や「全部事項証明書」とも呼ばれます。
「戸籍謄本」に似たものに「戸籍抄本」がありますが、これは戸籍に記載されている方のうち一人または複数人の身分事項を証明するものになります。
「戸籍謄本」は、本籍地のある役所で取得します。本籍地が不明な場合は、住民票を取得することで本籍地を確認できます。
除籍謄本
「除籍謄本」とは、その戸籍に入っていた人すべてが婚姻や死亡、転籍と言った事情によりその戸籍からいなくなり、カラになってしまった戸籍の写しを指します。
つまり、その戸籍に属する人が一人でも存続していれば、除籍謄本にはなりません。
「除籍謄本」は、本籍地のある役所で取ることができます。役所内で戸籍類の保管方法が電子化されている場合は、「除籍全部事項証明書」が交付されます。
改製原戸籍
「改製原戸籍」とは、法律の改正により戸籍が新しい様式に作り直された場合の、法改正前の状態の古い戸籍のことをいいます。正式名称は「改製原戸籍」ですが、「原戸籍」とも呼ばれます。「原戸籍」の読み方は「げんこせき」ですが、「現戸籍」と間違えないよう「はらこせき」と読まれるのが一般的です。
戸籍は複数回様式変更されており、現在は「平成改製原戸籍」と「昭和改製原戸籍」の2種類が代表的です。「改製原戸籍」は、本籍地のある役所で取ることができます。
法定相続とは
法定相続人
遺言書が無い場合は「法定相続」が適用され、民法で定められた「法定相続人」が不動産を相続することになります。「法定相続人」は基本的には被相続人(=亡くなった人)の配偶者と子ですが、子がいない場合は親や兄弟姉妹も相続人となり得ます。
被相続人の子は、相続人となる。
民法第887条
次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一 被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二 被相続人の兄弟姉妹
民法889条
被相続人の配偶者は、常に相続人となる。
民法890条
配偶者と子が相続する場合
配偶者は2分の1、子は2分の1の割合で相続します。子の2分の1という割合は「子ども全体に認められる相続分」なので、子どもが複数いる場合には人数で頭割り計算します。
被相続人に離婚歴がある場合などは、前配偶者との間の子も相続人となりますが、前配偶者本人はすでに離婚して婚姻関係がなくなっている以上、「配偶者」ではないので相続権は認められません。
また、養子も相続人となります。
代襲相続がある場合
もし、相続人である「子」が被相続人よりも前に死亡していた場合には、子の子、つまり被相続人の「孫」へ代襲相続されることになります。
その場合には被相続人と同じように、死亡した「子」についても出生から死亡までの戸籍を確認し、「子」に関する相続人についても調査する必要があります。
被相続人に子がいない場合
被相続人に子やその代襲者がいない場合には、配偶者のみ、もしくは配偶者と被相続人の父母もしくは祖父母といった直系尊属が相続人となります。
配偶者と父母が相続人となるときは、配偶者が3分の2、父母が3分の1の割合で相続します。父母の3分の1という割合は2人で等分します。父母のみが相続人のときは、父母で2分の1ずつ相続します。
被相続人に子と直系尊属がいない場合
被相続人に子やその代襲者がおらず、被相続人の直系尊属もすでに全員死亡している場合は、被相続人の兄弟姉妹に相続権が発生します。
配偶者と兄弟姉妹が相続人となるときは、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1の割合で相続し、兄弟姉妹のみが相続人のときは100%相続します。兄弟姉妹が複数いる場合にはいずれの場合も人数で頭割り計算します。
法定相続の持ち分に基づき、共有で相続する場合
相続人が1人であれば、法定相続持ち分もありませんので、そのまま相続しても面倒にはなりません。しかし相続人が複数人いるときは、基本的に不動産はすべての法定相続人による共有状態となり、共有持分割合は法定相続分に従います。
相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。
民法898条
この共有状態のまま不動産を相続することも可能ですが、共有名義の不動産は、維持管理の面や売却などの場合に共有者同士で意見が合わず、トラブルに発展することが少なくありません。
特に他の相続人が人数が多い場合や遠方にいる場合などで、その他の相続人も亡くなりさらに相続が発生してしまうと、手続きがより煩雑になりトラブルの可能性も高くなっていきます。
このような共有状態を避けるためには、早期に「遺産分割協議」を行う必要があります。
遺産分割協議とは
「遺産分割協議」とは、相続が発生した際に、法定相続人全員で遺産の分割について協議し、合意することです。法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることも可能です。
相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が一人でも欠けた状態でなされた分割協議は無効となります。
遺産分割協議において、誰がどの相続財産を相続するかを協議しますので、不動産についても誰が引き継ぐかを決定します。そしてその内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印で押印します。
不動産相続において、遺産分割協議が必要なケースは下記の4つが考えられます。
- 遺言書が無く、相続人が複数いるが共有で相続を行わない場合
- 遺言書があるが、検認の結果、遺言書が無効となった場合
- 遺言書があるが、遺言書の内容に納得ができない場合
- 遺言書があるが、遺言書に不動産の相続について記載がない場合
遺言書については、別記事にて詳しく説明しています。
相続登記をする
「遺産分割協議」により不動産の相続人が決まったら、その不動産の名義を相続人の名義に変更する「相続登記」を、不動産の所在地を管轄する法務局に申請します。
ちなみに、令和4年度国土交通省調べによるデータによるとわが国には、相続が発生したにもかかわらず相続登記がされていないため、登記簿をみても所有者が分からない「所有者不明土地」が、国土の約24%も存在しているそうです。
それらの「所有者不明土地」の解消を目指し、2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。そのため、相続登記を行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性がありますので、注意が必要です。
相続登記義務化については、別記事にて詳しく説明しています。
遺産分割協議による相続の手続きの流れ
遺言書の有無の確認
不動産の相続が発生したら、遺言書があるかどうかをまず確認します。
有効な遺言書がある場合は、「遺言による相続」となり、遺言書で指定された人が新たな所有者として不動産を相続します。
遺言書がない場合、「法定相続」または「遺産分割協議による相続」となりますが、遺産分割協議後に遺言書が見つかった場合でも遺言書の内容が優先されるため、手続きの無駄を防ぐためにも、遺言書の有無の調査はとても重要です。
遺言については、別記事にて詳しく説明しています。
相続人調査
遺言書が無い場合は、不動産の法定相続や遺産分割協議などの手続きを進めるために「相続人は誰なのか」を調べて確定させるため、被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍を取り寄せ「相続人調査」をします。
相続する不動産の確認
「相続人調査」と同時進行で、権利証(登記識別情報)や市町村から届く固定資産税の課税明細書を見て、相続対象となる不動産を確認します。
もし、それらの書類がなければ、所有する不動産があると思われる市区町村で「名寄帳」を確認する必要があります。
遺産分割協議
法定相続人全員で遺産の分割について協議し、不動産についても誰が引き継ぐかを決定します。そして、その内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印で押印します。
相続人に未成年者がいる場合は、その代理人の参加も必要です。相続人が一人でも欠けた状態でなされた分割協議は無効となります。
相続登記申請
不動産の相続人が必要書類を準備し、法務局へ相続登記申請をします。これで相続の手続きは完了です。
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されたため、相続登記を行わずに放置しておくと過料を科されてしまう可能性があります。また、相続した不動産を売却する場合も、必ず相続登記をしなければなりません。
早めに相続登記の手続きを行うことをオススメします。
相続登記義務化については、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け継ぐ人を「相続人」といいます。
遺言書が無い場合は、不動産の法定相続や遺産分割協議などの手続きを進めるために「相続人調査」を行います。被相続人が生まれてから死亡するまでの戸籍を取り寄せ、「法定相続人」が誰かを調べます。
「相続人調査」で必要となる戸籍の種類は3つです。
- 戸籍謄本
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
また、民法で定められた「法定相続人」は下記の通りです。
- 配偶者
- 子(前配偶者との間の子、養子も含む)
- 直系尊属(子がいない場合)
- 兄弟姉妹(子、直系尊属がいない場合)
同時に権利証(登記識別情報)や市町村から届く固定資産税の課税明細書を見て、相続対象となる不動産を確認します。
次に、下記の場合は「法定相続人」全員で「遺産分割協議」を行い、不動産について誰が引き継ぐかを決定します。
- 遺言書が無く、相続人が複数いるが共有で相続を行わない場合
- 遺言書があるが、検認の結果、遺言書が無効となった場合
- 遺言書があるが、遺言書の内容に納得ができない場合
- 遺言書があるが、遺言書に不動産の相続について記載がない場合
そして、「遺産分割協議」の内容をまとめた「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が署名し、実印で押印します。
最後に、不動産の相続人が必要書類を準備し、法務局へ相続登記申請をすることで、「遺産分割協議」による相続の手続きは完了です。
相続した不動産を売却する場合は、必ず相続登記をしなければなりません。早めに相続登記の手続きを行うことをオススメします。なお、相続登記のコスト・時間・手間を抑えたい場合は、相続不動産専門の名義変更webサービスの利用が便利です。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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