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「私道」に接する物件を売却する方法4選

不動産売却
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親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!

そんなお悩みを持つ方へ・・・その家が接する道路は「誰が所有」する道路ですか?

「私道」に接する物件を売却することは条件によって面倒な場合も多いので、「不動産買取再販専門会社」で約19年働いた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、

  • 公道と私道の違い
  • 公道か私道かを判断する3つの方法
  • 私道の種類
  • 私道の1つのメリット・6つのデメリット
  • 契約不適合責任のリスク
  • 私道の使用について
  • 「私道」に接する物件を売却する方法4選

を、不動産買取専門業者目線で解説します!

この記事を読めば、「私道」に接する物件を売却する方法が見つかります。

公道と私道の違い

日本の道路は、「公道」「私道」とに分かれています。

公道とは、国道・都道府県道・市区町村道など、誰でも通行できる国や地方自治体などが管理する公の道路のことで、国や地方自治体が道路を清掃したり、道路が陥没等したときは復旧工事をしたりします。

これに対して、私道は私的に所有・利用される道路状の土地のことをいい、清掃や補修工事などの維持管理は私道の所有者が責任を負い、その費用も負担します。

公道か私道かを判断する3つの方法

所有する不動産が接する道路が、公道私道かを判断する方法としては下記の3つがあります。

不動産購入時の重要事項説明書を確認する

重要事項説明書とは、不動産を売買するときに不動産仲介会社が不動産の調査をして作成し、買主と売主に交付される書面で、簡単に言うと物件の説明書です。
 
道路の種別も調べて記載する必要がありますので、不動産購入時の重要事項説明書があれば道路種別の欄を確認してみましょう。

不動産が存する自治体の役所で確認する

不動産の所在地を管轄する自治体の役所の道路を管理する窓口に行き、「前面道路が公道私道か知りたいです。」と尋ねると、公道かどうかを教えてもらえます。その際、住宅地図が必要になる場合がありますので、持参して行くと安心です。

法務局書類で確認する

法務局で「所有する土地が接する私道について、公図と登記事項証明書の取り方を教えてください。」と尋ねると、公図と登記事項証明書の取り方を教えてもらえます。
 
公図の道路部分に地番が無い場合や、登記事項証明書に記載された所有者が国や地方自治体であれば公道、所有者が個人や法人であれば私道ということになります。

私道の種類

私道には、主に下記の3つのような種類があります。

共有持分型

共有持分型はひとつの私道に複数の敷地が接しており、その道路を通行する必要のある土地の所有者全員が、均等な割合の持分で共同で所有している私道です。

ひとつの私道に接する土地所有者で共有する私道です。

分筆持分型

分筆持分型は、私道を分筆して道路に接する土地の所有者がそれぞれ単独で所有している私道です。単独所有されている私道を組み合わせて、一本の私道を成立させます。

分割持分型の私道は自身の土地の前面部分に持分がなく、その道路内の離れた位置に持分がある場合があります。

このケースは前面部分に持分があると、そこに植木や物置を設置したりする人が現れて他の土地の所有者の通行を妨げてしまうことを防ぐために、当初の分譲会社などが意図的に離して持分登記を行ったためだと考えられます。

道路を分筆し、それぞれの土地所有者が単独所有する私道を一体にして道路を形成します。

私道負担(セットバック)型

私道負担型とは、敷地の一部が私道部分に含まれているケースや、敷地のほかに私道部分を別途所有しているケースを指します。

幅員4m未満の道路の場合に、その道路に接する敷地を後退させ道路の幅を4m以上確保して接道義務を果たすという「セットバック」のケースが多く、敷地の一部を道路(私道)として扱います。これは消防車などの緊急車両が通行できるようにすることなどが目的とされています。

それぞれの土地の一部を道路として提供し道路幅員を4m以上確保する「セットバック」のケースです。

私道の1つのメリット・7つのデメリット

私道の1つのメリット

私道の唯一のメリットは、その道路を通行する必要のある土地の所有者およびその関係者以外の通行や無断駐車を禁止にして、知らない人や車の通行を少なくし比較的安全な道路にすることができることです。

私道の6つのデメリット

道路の維持管理費用がかかる

公道の維持管理は国や自治体が行いますが、私道は所有者が維持管理しなければならないため、所有者全員で道路整備にかかる費用を負担することになります。

例えば、どうしても私道を舗装しなければならない事情が出てきた場合、その舗装に要した費用は私道所有者で負担し合うことになりますが、費用負担をどうするかなど所有者全員の合意が取れない場合、舗装工事が実施できないケースも想定されます。

上下水道やガスの配管が私設管の場合がある

私道に埋設されている上下水道やガスの配管は私設管である場合もありますが、私設管の経年劣化や破損がある場合、配管の修繕費用を負担するのはその私設管利用者です。

私設管の老朽化が進んでいても、私道が分筆持分型や私道負担(セットバック)型の場合、他の所有者が所有する道路部分を勝手に掘削したり修繕することはできませんので、他の所有者から掘削の承諾を取り付ける必要があります。

また、私道が共有持分型の場合や、分筆持分型でも私道全体の工事になる場合、関係者全員の同意と費用の負担が必要になります。

実際に修繕などをするか否か、費用負担をどうするかなど、関係者全員の合意が取れなければ整備できません。

通行するための費用を求められる場合がある

私道に持分を持たない場合、その道路の所有者に対し、通行料や掘削承諾料といった名目の金銭を支払わなければ、道路の通行や使用を認めてもらえないケースも考えられます。

道路の共有者の一部が所在不明の場合がある

数人で共有している私道で、共有者の一部に相続が発生し、相続人が誰かわからず所在不明となるケースも多いです。

共有者の一部が所在不明となれば、私道の維持管理費用はその分他の共有者が負担しなければなりませんし、掘削の同意が全員分揃わずライフラインの修繕もできない、という状況にもなりかねません。

道路部分についても固定資産税を支払わなければならない場合がある

宅地部分だけでなく、私道部分の土地に対しても自分の持分に応じて、固定資産税を納める義務を負う場合があります。

万が一、私道の共有者の一部が所在不明で負担を求めることができない場合は、他の共有者たちでその分を負担しなければいけない可能性も考えられます。

私道が建築基準法に定める道路か否か確認が必要

「建築基準法」では、「建築物の敷地は(幅員4m以上の)道路に2m以上接しなければならない。」と定められており、この接道条件を満たさない土地は、再建築(=建て替え)ができない「再建築不可」物件となります。

物件が接する私道「建築基準法上の道路ではない」場合も、土地と道路は問題なく接しているが接道条件を満たすことができず、再建築不可物件と扱われます。

再建築不可物件は住宅ローンを利用できない可能性が高く、一般のお客様に売却しようとしても購入自体を断られてしまうケースが考えられ、売却が困難になる場合があります。

なお、建築基準法上の道路とは、建築基準法第2条1項に定められている5種類の道路です。

  • 42条1項1号道路…道路法上の道路
  • 42条1項2号道路…開発道路
  • 42条1項3号道路…既存道路
  • 42条1項4号道路…計画道路
  • 42条1項5号道路…位置指定道路

接する道路が建築基準法上の道路かどうかは、現況の幅員が4mあるかを確認したうえで、役所で確認が必要となります。

再建築不可物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。

→「再建築不可物件」を売却する方法4選

契約不適合責任のリスク

一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。

契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。

再建築不可物件は「法的瑕疵」に該当します。さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。

これらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、買主がまったく保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。

そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵がある物件であることを買主へ告知せず売却した場合は、契約不適合責任を問われ、契約の解除や追完請求、代金減額請求などを受けることになります。

私道の使用について

公共の道路である公道と異なり、私道を使用する際には、私道の所有者から次の行為について承諾が必要となります。

  • ガス管、上下水道管の埋設及び引き込み工事を行なうこと
  • 上記の工事のために道路を掘削したり、埋め戻しを行うこと
  • 人や車両が無償で通行したり使用したりすること

所有権を持たない私道に接する土地を売却する際にそれらの承諾が無い場合、買主に対し道路の通行や掘削などが制限され、建築やインフラ工事ができない恐れがあるなど様々なトラブルが生じることが予想されます。

そのため、不動産会社や買主からそれらの承諾を証明する書面として、「通行掘削承諾書」という書類の交付を求められる場合があります。

新参者である買主が私道の所有者から通行掘削承諾書を取得するよりも、今までの所有者である売主が取得することの方がハードルが低いと予想されるためです。

また、通常、通行掘削承諾書で得た承諾は買主である第三者にも承継される旨の記載がありますので、売主から通行掘削承諾書の交付を受けた買主もその承諾を証明することができます。

民法による規定

所有権を持たない土地の通行に関しては、民法第210条に規定があります。

他の土地に囲まれて公道に通じない土地の所有者は、公道に至るため、その土地を囲んでいる他の土地を通行することができる。

民法第210条

他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、その土地を囲んでいる他の土地(囲繞地(いにょうち))を通行できるとする権利で、「囲繞地通行権」といわれます。

また、上下水道管やガス管などのライフラインについても、2023年4月の民法改正により、民法第213条の2に規定が明文化されました。

土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。

 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。

 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

民法第213条の2

あらかじめ私道の所有者に通知をすることにより、他の土地にライフラインの設備を設置する権利(設備設置権)と、他人が所有するライフラインの設備を使用する権利(設備使用権)が認められます。

ただし、他人の土地や設備に損害を与えた場合は賞金を支払わなければならず、また、利益を受ける分、維持や修繕にかかる費用も負担しなければなりません。

通行掘削承諾書がない場合の3つのリスク

原則として私道に持分を持っていれば、私道を通行する権利も掘削する権利も有します。また、持分を持たない場合でも上述のとおり民法により「囲繞地通行権」「設備設置権」及び「設備使用権」が認められてはいます。

ただし、法律で守られている部分があるとはいえ、私道の「通行掘削承諾書」を取得していない場合、実際には下記のようなトラブルが起きるリスクが考えられます。

ライフラインの引込工事ができない

住宅の新築を行う場合は特に上下水道管やガス管を敷設が必要不可欠ですが、工事にあたり水道局やガス会社から通行掘削承諾書の提出を求められる場合があります。

通行掘削承諾書が提出できない場合にそれらの工事も開始できないとなれば、住宅を建てることができなくなります。

住宅ローンが利用できない

「ライフラインの引込工事ができず住宅が建てられない」というケースがあると、土地の評価にも影響がありますので、住宅ローンの借り入れにも影響を及ぼす可能性があります。

特に私道に持分を持たない場合、住宅ローンを利用するためには通行掘削承諾書の取得が必須となるケースは多いようです。

通行や掘削について費用を請求される

今まで特に問題なく使用していた道路でも、道路所有者が変われば通行や掘削に対して費用を請求してくる可能性も考えられます。

「私道」に接する物件を売却する方法4選

通行掘削承諾書を取得し売却する

私道に所有権(持分)を持っている場合は、買主のために他の道路共有者全員から通行掘削承諾書を取得しておくことで、私道に接する物件を格段に売却しやすくなります。

道路の持分を取得し、さらに通行掘削承諾書を取得し売却する

私道に所有権(持分)を持っていない場合は、他の道路共有者から道路の持分を一部取得したうえで、さらに買主のために通行掘削承諾書を取得しておくことで、私道に接する物件を格段に売却しやすくなります。

道路の持分を一部取得するためには、持分を購入しなければならない場合がありますので、その際は費用がかかることになります。

通行掘削承諾書は買主に取得してもらう

通行掘削承諾書は買主に取得してもらう、という条件で売却することも可能です。

ただし取得に対してのハードルを考慮され値下げが必要となるリスクや、買主が通行掘削承諾書を取得できない場合は売買契約が白紙解除となる旨の特約が入れられるというリスクは覚悟しておくべきでしょう。

不動産買取専門業者に売却する

一般のお客様の中から買い手を探すとなると、前述したように売主が通行掘削承諾書の取得を求められる場合がありますが、手間もかかるうえに、必ずしも他の道路共有者全員から通行掘削承諾書を取得できる保証もありません。

運よく通行掘削承諾書を取得できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。

仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。

売主にとって「通行掘削承諾書を取得するための手間と時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。

通行掘削承諾書も不動産買取専門業者が取得してくれる場合があります。

しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。

不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。

→不動産の売却で「買取」をオススメするケース4選

まとめ

不動産の売却を考える際に、物件が接する道路が「公道」なのか「私道」なのかを調べることはとても重要です。

公道とは、誰でも通行できる国や地方自治体などが維持管理する公の道路のことで、私道は私的に所有・利用される道路状の土地のことをいい、維持管理は私道の所有者が責任を負い、その費用も負担します。

私道には主に「共有持分型」、「分筆持分型」、「私道負担(セットバック)型」の3種類があります。

私道の唯一のメリットは、関係者以外の通行や無断駐車を禁止にして、知らない人や車の通行を少なくし比較的安全な道路にすることができることです。

逆にデメリットとしては下記の6つが挙げられます。

  • 道路の維持管理費用がかかる
  • 上下水道やガスの配管が私設管の場合がある
  • 通行するための費用を求められる場合がある
  • 道路の共有者の一部が所在不明の場合がある
  • 道路部分についても固定資産税を支払わなければならない場合がある
  • 私道が建築基準法に定める道路か否か確認が必要

私道に接する部県の売却にあたり、私道の所有者から「通行掘削承諾書」という書類を取得するよう、不動産会社や買主から求められる場合があります。

民法により「囲繞地通行権」「設備設置権」及び「設備使用権」が認められてはいるものの、通行掘削承諾書を取得していない場合、実際には下記のようなトラブルが起きるリスクが考えられるためです。

  • ライフラインの引込工事ができない
  • 住宅ローンが利用できない
  • 通行や掘削について費用を請求される

私道に接する物件を売却する方法は4つ考えられます。

  • 通行掘削承諾書を取得し売却する
  • 道路の持分を取得し、さらに通行掘削承諾書を取得し売却する
  • 通行掘削承諾書は買主に取得してもらう
  • 不動産買取専門業者に売却する

最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。

  • 短期間で売却できる
  • 仲介手数料が不要
  • 「通行掘削承諾書」を取得してもらえる場合がある
  • 契約不適合責任が免責となる場合がある

私道に接する物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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