親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は山や崖、川の近くにありませんか?
山や崖、川に近い地域は「土砂災害警戒区域内」に指定されている場合があります。
「土砂災害警戒区域内」にある物件を売却することは条件によって難しい可能性もありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 土砂災害警戒区域とは
- 土砂災害警戒区域の調べ方
- 土砂災害警戒区域内にある物件の3つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 土砂災害警戒区域内にある物件を売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない土砂災害警戒区域内の物件でも、売却する方法が見つかります。
土砂災害警戒区域とは
崖が数多くある場所や山あいの土地など土砂災害が発生しやすい地域は、「土砂災害防止法(土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)」に基づき土砂災害によって住民に被害が及ぶ危険性がある区域として、「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」と「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」の2つが指定されています。
国土交通省が公開しているデータによると、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)および土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の指定区域は全国で年々増加傾向にあり、令和5年度末時点で土砂災害警戒区域(イエローゾーン)指定区域は約69.4万箇所、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)指定区域は約59.6万箇所にもおよびます。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)
都道府県知事は、基本指針に基づき、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における土砂災害(河道閉塞による湛水を発生原因とするものを除く。以下この章、次章及び第二十七条において同じ。)を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第7条
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは、土砂災害を防止するために警戒や避難計画の整備が必要な区域ですが、川や山岳地帯の近くに限定されるわけではなく、一見すると危険にさらされているとは思われない平坦な土地も含まれる場合があります。
土地区画整理などの開発行為や、住宅の建築について特に制限はありませんが、買主の購入判断に重大な影響を与える可能性があるため、売主は物件の売却時に「土砂災害警戒区域内であることを買主へ告知」しなければなりません。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)
都道府県知事は、基本指針に基づき、警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合には建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為の制限及び居室(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有する建築物の構造の規制をすべき土地の区域として政令で定める基準に該当するものを、土砂災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の中でも急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ、住民等の生命や身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域です。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は土砂災害の危険性が極めて高いため、宅地分譲のための開発や社会福祉施設、幼稚園、病院を建設するための開発など、特定の開発行為を行う場合には都道府県知事の許可を得る必要があります。
さらに、建築物は土石等の衝撃に対して安全な構造であることの確認が必要など、建築物の構造規制もかかり、条件を満たさない建築物を建築することはできません。
また、著しい損壊が生じる恐れのある建築物の所有者等に対し、都道府県知事は移転等の勧告ができます。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は開発行為や、住宅の建築について規制がかかり、買主の購入判断に重大な影響を与える可能性が高いため、売主は物件の売却時に「土砂災害特別警戒区域内であることを買主へ告知」しなければなりません。
土砂災害警戒区域の調べ方
土砂災害警戒区域を調べるには、物件が存する地域の市役所など自治体の危機管理防災課(行政により名称は異なります)の窓口にて照会するのが最も確実な方法です。
窓口で「土砂災害ハザードマップ」などを確認し、物件が土砂災害警戒区域内に位置しているかどうか確認することができます。
それ以外にも、自治体が土砂災害警戒区域の位置をホームページで公開している場合もあります。
土砂災害警戒区域内にある物件の3つのデメリット
災害が発生する可能性が高い
土砂災害警戒区域は、豪雨や地震によって急傾斜地に土石流や地滑り、崖崩れなどが起こり住民の生命や身体に危険が及ぶ可能性が高い区域になりますので、当然ながら土砂災害が発生する可能性が高い地域です。
そんな危険な地域にあえて住みたい、という方は少ないと思いますので、この点が最大のデメリットとなります。
開発行為や、住宅の建築について規制がかかる
前述の通り、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内の場合、特定の開発行為や住宅の建築について規制がかかります。
そのため買主にとって希望する建物を建てられない可能性があり、購入客のニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
住宅ローンが利用できない場合がある
【フラット35】Sは、住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して扱う住宅ローンのひとつであり、一般的なものと比べて金利が優遇されている住宅ローンです。
政府は、命の危険性がある地域で人口が増えることを防ぐため、2021年10月から土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)で新築住宅を購入や新築する場合に、条件により【フラット35】Sを利用不可としました。
【フラット35】Sが利用不可となるケースは「敷地と建物の全て」または「敷地と建物の一部」が土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内にある場合です。
下記のような場合は引き続き【フラット35】Sの利用は可能です。
- 敷地の一部が土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内にあっても、建築する建物は区域外にある
- 中古住宅の購入
- 土砂災害警戒区域(イエローゾーン)内での住宅購入や新築
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
「契約不適合責任」とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
土砂災害防止法により受ける建築制限などは「法的瑕疵」に該当します。さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
これらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、売主から買主に対して「告知義務」があります。
当然ながら、売買契約前に買主がそれらの瑕疵を自力で発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵に該当する部分について売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や損害賠償請求、代金減額請求などを受けることになります。
土砂災害警戒区域内にある物件を売却する方法2選
土砂災害警戒区域内であることを気にしない買主に売却する
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)内であれば、住宅の建築などについて特に制限はありませんので、気にしない買主が見つかれば売却することが可能です。
また、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内であっても、建物を建てる予定がなく、例えば駐車場用地など土地として購入したいという買主や、現金客で建物を建て直さずリフォームして住み続けるという買主などを見つけることができれば、売却は可能です。
ただしニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
不動産買取専門業者に売却する
特に土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内の物件は、前述したように開発や建築に制限がかかり、災害時には生命や身体に著しい危害が生ずるおそれが生ずる可能性もあるため、「訳あり物件」とみなされ長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく、それらのリスクを納得した買主に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
土砂災害が発生しやすい地域は、「土砂災害防止法」に基づき土砂災害によって住民に被害が及ぶ危険性がある区域として、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)と土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の2つが指定されています。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)とは、土砂災害を防止するために警戒や避難計画の整備が必要な区域で、土地区画整理などの開発行為や、住宅の建築について特に制限はありません。
土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)とは、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の中でも急傾斜地の崩壊等が発生した場合に建築物に損壊が生じ、住民等の生命や身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、開発行為や住宅の建築について規制がかかります。
物件が土砂災害警戒区域内に位置していると判明した場合、次の3つのデメリットが考えられるため、買主に敬遠される可能性が出てきます。
- 災害が発生する可能性が高い
- 開発行為や、住宅の建築について規制がかかる
- 住宅ローンが利用できない場合がある
そんな土砂災害警戒区域内にある物件を売却する方法は2つ考えられます。
- 土砂災害警戒区域内であることを気にしない買主に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 土砂災害警戒区域内でも検討可能
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
土砂災害警戒区域内にある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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