親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。
でも、不動産屋さんに家の売却を依頼したいと思いつつ、なかなかその一歩を踏み出せない・・・。
そんなお悩みを持つ方へ・・・2025年に「建築基準法が改正」されることをご存じですか?
「建築基準法が改正」されたら、その家が2階建ての場合、売却できる価格は今より厳しくなるかもしれません。
そこで「不動産買取専門会社」で約19年働き600件以上の不動産買取再販に関わり、中古住宅の売買に精通する「不動産買取」のプロである僕が、
- 2025年「建築基準法改正」の内容
- 中古住宅のリフォームに対しての影響
- 中古住宅の売却に対しての影響
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、2025年の「建築基準法改正」が中古住宅市場へ与える影響の大きさがわかります。
2025年「建築基準法改正」の内容
法改正の背景
2025年4月に建築基準法が改正されます。
背景として、2022年6月に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。
今まで省エネ基準適合義務の対象外だった住宅や小規模な建築物の省エネ基準への適合を義務付けし、脱炭素社会の実現に寄与するという目標があります。
この法律に関連付ける流れで建築基準法が改正されることになり、
- 省エネ基準への適合
- 省エネ化に伴い重量化する建築物に対応する構造安全性の基準への適合
これらを確実に担保していくことになります。
4号特例(建築基準法施行第6条)
建築基準法は、建築物を建築(増改築を含む)する場合の基準が決められている法律ですが、その基準が守られなければ安全で快適な建築物とは言えません。
そこで、設計の段階で基準に適合しているか事前に確認を受けなければならず、これを「建築確認申請」といいます。
本来なら全ての建築物について建築確認申請を行うことが望ましいのですが現実的ではないため、簡素化や合理化をはかるための特例があります。
「木造平家建て」と「木造2階建て」は現在「4号建築物(建築基準法第6条第1項第4号に該当する建築物)」と呼ばれており、いわゆる「小規模の建築物」として、一定の条件で建築確認申請を省略(4号特例)することができます。
あくまで「申請を省略」できるだけで、建物を建築基準法に適合させる必要はあります!
4号建築物
- 建築基準法6条第1項第4号に該当する建築物
- 木造2階建て以下、延床500㎡以下
- 都市計画区域等内に建築する際に建築確認と検査が必要
- 審査省略制度の対象
多くの中古住宅がこの4号建築物に該当するため、今までは大規模リフォームであっても建築確認申請を行う必要がないという認識が一般的でした。
しかし今回の法改正では、この4号建築物が「新2号建築物」と「新3号建築物」に分かれることになり、次のような特徴を有することになります。
新2号建築物
- 改正法6条第1項第2号に該当する建築物
- 木造2階建てもしくは延床200㎡を超える木造平屋建て
- 全ての地域で建築確認と検査が必要
- 審査省略制度の対象外
新3号建築物
- 改正法6条第1項第3号に該当する建築物
- 延床200㎡以下の木造平屋建て
- 都市計画区域等内に建築する際に建築確認と検査が必要
- 審査省略制度の対象
この4号特例の縮小により、今後は200㎡以下の木造平家建ての住宅のみが新3号建築物として従来の4号建築物と同じ扱いとなります。
今まで4号建築物として扱われてきた一般的な木造2階建て住宅は、新2号建築物となり、新築時はもちろんのこと、リフォームやリノベーション、中古住宅の売却に大きく影響する可能性があります。
では、どのような影響があるのか、詳しく見ていきましょう。
中古住宅のリフォームに対しての影響
建築確認・構造関係規定等の審査が必要になる
一般的な木造2階建て住宅は今まで4号建築物として扱われており、建築士が設計を行った場合は新築の建築確認時には構造関係規定等の審査を省略することができました。
また、本来は建築確認が必要な中古住宅の「大規模の修繕」や「大規模の模様替」時においても、建築確認が不要とされてきました。
それが今後は新2号建築物として取り扱われるため、新築時はもちろんのことながら、中古住宅の大規模の修繕や大規模の模様替においても建築確認・構造関係規定等の審査が必要となります。
「大規模の修繕」「大規模の模様替」とは
この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。
十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
建築基準法第2条
「修繕」とは、「修繕前と同じ材料を使って、できる限り、見た目も含めて建物を新築当時の水準にまで戻すこと」とされています。
「模様替」とは、「模様替前の材料とは違う材料や仕様に変えて、原状回復を目的とせず建物の性能や資産価値の向上を図ること」とされています。
修繕はいわゆる「リフォーム」、模様替はいわゆる「リノベーション」という感じでしょうか。
そして主要構造部の半分を超える範囲を工事する場合は、「大規模」な修繕や模様替となります。
例えば、
- スケルトンリフォーム
- 家全体の間取り変更
- 階段の掛け替えや位置変更
- 屋根の葺き替え
- 外壁の張り替え
などが大規模な修繕や模様替に該当します。
手間と費用がかかる場合がある
大規模の修繕や大規模の模様替において建築確認・構造関係規定等の審査を行う場合、まず既存の建物そのものが建築基準法を遵守していることが大前提となります。
そのため、建物が適法に建てられていることを証明する「検査済証」の提出が求められます。
しかし古い住宅には検査済証が無い(検査されていない)物件が意外に多く、検査済証が無い建物の適法性を担保するためには「建築基準法適合調査」という調査を別途、実施する必要があります。
もちろんその調査は専門の機関に依頼しなければならず、建築確認申請と併せて数十万円程度の費用が発生します。
「大規模の修繕」や「大規模の模様替」ができなくなるわけではありませんが、リフォームにあたり下記のようなことが起こる可能性があることを頭に入れておきましょう。
- 今まではほぼ不要だった確認申請の書類を準備するという手間が増える
- 今まではほぼ不要だった建築確認申請の費用が余計にかかる
- 調査、申請に時間を要し、今までよりもリフォームにかかる期間が長くなる
中古住宅の売却に対しての影響
「再建築不可物件」「違反建築物件」が売りづらくなる
建築基準法の接道条件を満たさない「再建築不可物件」については、建て替えることができないため、これまで大規模な修繕や模様替えを行うことで価値の向上を図ることが多く見受けられました。
しかし2025年4月以降は大規模な修繕や模様替えに対し建築確認申請が必要となるため、再建築不可物件は再建築可能となる接道条件を満たさない限り、大規模な修繕や模様替えの工事を行うことができなくなります。
再建築不可物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
また、「違反建築物件」についても同様に、違反部分の是正を行わなければ大規模な修繕や模様替えの工事を行うことはできなくなります。
違反建築物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
ただでさえ、中古住宅のリフォームについては下記のようなリスクがあります。
- 今まではほぼ不要だった確認申請の書類を準備するという手間が増える
- 今まではほぼ不要だった建築確認申請の費用が余計にかかる
- 調査、申請に時間を要し、今までよりもリフォームにかかる期間が長くなる
そのうえで再建築不可物件や違反建築物件については、さらに下記のような対応が必要となります。
- 接道要件を満たすため、隣地の土地の一部を購入し接道要件を満たす
- 違反建築部分について是正工事を行う
再建築不可物件や違反建築物件を売買するハードルは高くなるといえます。
「省エネ性能」で売れ行きが左右される可能性がある
昨今の建築資材や人件費の高騰などにより、新築住宅の価格は高止まりしている傾向がみられます。
そうすると、相対的に価格が安い中古住宅の購入を検討される方が増えてきます。
さらに2025年4月から、すべての新築住宅は「省エネ基準適合が義務化」され、省エネ基準に適合しない新築住宅は住宅ローン減税の対象から外されます。
建築基準法が改正されるのも、この「省エネ基準適合の義務化」に対応するためのものです。
また2024年4月から新築住宅は「建築物の省エネ性能表示制度」がスタートしており、事業者は新築住宅の広告をする際に、「エネルギー消費性能」および「断熱性能」を星や数値で示した「省エネ性能」のラベルを表示することを求められています。
新築住宅は事実上、省エネ性能のラベル表示義務化ともいえる状況です。
そして、新築住宅から中古住宅に流れてくる方は、そもそも省エネに対する意識が高めである場合が多い傾向があるため、中古住宅にもラベル表示が推奨されています。
そのように省エネ性能が可視化されていく中で、現行の省エネ性能を満たさない中古住宅は、今まで以上に「既存不適格物件」として扱われやすくなります。
今後は中古住宅といえども省エネ性能が売れ行きを左右する価値のひとつになる可能性があります。
まとめ
2025年4月から建築基準法が改正され、今まで「4号建築物」として扱われていた「木造平家建て」と「木造2階建て」が、法改正後は「新2号建築物」と「新3号建築物」に分かれることになります。
一般的な木造2階建て住宅は新2号建築物となり、新築時はもちろんのことながら、中古住宅の「大規模の修繕」や「大規模の模様替」においても建築確認・構造関係規定等の審査が必要となります。
さらに、大規模の修繕や大規模の模様替において建築確認・構造関係規定等の審査を行う場合、まず既存の建物そのものが建築基準法を遵守していることが大前提となり、建物が適法に建てられていることを証明するため、「検査済証」の提出が求められます。
しかし古い住宅には検査済証が無い(検査されていない)物件が意外に多く、検査済証が無い建物の適法性を担保するためには「建築基準法適合調査」という調査を実施する必要があります。
つまり、中古住宅のリフォームについては今後下記のようなリスクが考えられます。
- 今まではほぼ不要だった確認申請の書類を準備するという手間が増える
- 今まではほぼ不要だった建築確認申請の費用が余計にかかる
- 調査、申請に時間を要し、今までよりもリフォームにかかる期間が長くなる
そのうえで、さらに「再建築不可物件」の場合は接道要件を満たすため隣地の土地の一部を購入し接道要件を満たす必要があり、「違反建築物件」の場合は違反建築部分をすべて是正工事を行うなどの対応が必要となるなど、特に再建築不可物件や違反建築物件を売買するハードルは高くなるといえます。
また2024年4月から新築住宅は「建築物の省エネ性能表示制度」がスタートしており、事業者は新築住宅の広告をする際に、「エネルギー消費性能」および「断熱性能」を星や数値で示した「省エネ性能」のラベルを表示することを求められています。なお、中古住宅についてもラベル表示が推奨されています。
省エネ性能が可視化されていく中で、現行の省エネ性能を満たさない中古住宅は、今まで以上に「既存不適格物件」として扱われやすくなり、今後は中古住宅といえども省エネ性能が売れ行きを左右する価値のひとつになる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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