親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は海の近くにありませんか?
海に近い地域は「津波災害警戒区域内」に指定されている場合があります。
「津波災害警戒区域内」にある物件を売却することは条件によって難しい可能性もありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 津波災害警戒区域とは
- 津波災害警戒区域の調べ方
- 津波災害警戒区域内にある物件の2つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 津波災害警戒区域内にある物件を売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない津波災害警戒区域内の物件でも、売却する方法が見つかります。
津波災害警戒区域とは
東日本大震災の津波による被災をきっかけとして、将来起こりうる津波災害の防止・軽減と、将来を見据えた津波災害に強い安全な地域の整備を目的に、2011年に「津波防災地域づくりに関する法律」が制定されました。
都道府県知事は「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき、津波による深刻な被害が予想され、住民の生命や身体に危害が及ぶ可能性が高い区域を「津波災害警戒区域(イエローゾーン)」、「津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)」、「津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)」のいずれかに指定します。
国土交通省が公開しているデータによると、令和5年度3月末時点で津波災害警戒区域(イエローゾーン)指定区域は約400市町村、津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)指定区域は1市となっています。
津波災害警戒区域(イエローゾーン)
都道府県知事は、基本指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえ、津波が発生した場合には住民その他の者(以下「住民等」という。)の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、当該区域における津波による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき土地の区域を、津波災害警戒区域(以下「警戒区域」という。)として指定することができる。
津波防災地域づくりに関する法律第53条
津波災害警戒区域(イエローゾーン)とは、津波災害の恐れがあり、津波から逃げることができるように警戒避難体制を特に整備すべき区域です。
建築の制限は特にありませんが、買主の購入判断に重大な影響を与える可能性があるため、売主は物件の売却時に「津波災害警戒区域内であることを買主へ告知」しなければなりません。
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)
都道府県知事は、基本指針に基づき、かつ、津波浸水想定を踏まえ、警戒区域のうち、津波が発生した場合には建築物が損壊し、又は浸水し、住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる土地の区域で、一定の開発行為(都市計画法第四条第十二項に規定する開発行為をいう。次条第一項及び第八十条において同じ。)及び一定の建築物(居室(建築基準法第二条第四号に規定する居室をいう。以下同じ。)を有するものに限る。以下同じ。)の建築(同条第十三号に規定する建築をいう。以下同じ。)又は用途の変更の制限をすべき土地の区域を、津波災害特別警戒区域(以下「特別警戒区域」という。)として指定することができる。
津波防災地域づくりに関する法律第72条
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)とは、津波災害警戒区域(イエローゾーン)の中でも、津波が発生した場合に建築物が損壊・浸水して著しい危害が生ずるおそれがある区域です。
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)内では、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設について土地利用規制が設けられ、建築にあたり都道府県知事の許可が必要となります。
また、許可を受けるためには下記の条件を満たす必要があります。
- 津波に対して安全な構造のものとして国土交通省令で定める技術的基準に適合している
- 病室の床面の高さが基準水位以上である
- 擁壁の設置など安全上必要な措置を国土交通省令で定める技術的基準に従う
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)は⼀定の開発⾏為・建築⾏為に対する⾏為制限がかかり、買主の購入判断に重大な影響を与える可能性があるため、売主は物件の売却時に「津波災害特別警戒区域内であることを買主へ告知」しなければなりません。
津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)
津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)とは、津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)の中でも特に迅速な避難が困難で危険な区域として条例で定められた区域であり、土地利用規制以外に住宅等の一定の開発行為及び建築の規制が条例で追加されます。
津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン」は開発行為や、住宅の建築について規制がかかり、買主の購入判断に重大な影響を与える可能性があるため、売主は物件の売却時に「津波災害特別警戒区域内であることを買主へ告知」しなければなりません。
津波災害警戒区域の調べ方
津波災害警戒区域を調べるには、物件が存する地域の市役所など自治体の危機管理防災課(行政により名称は異なります)の窓口にて照会するのが最も確実な方法です。
窓口で「津波ハザードマップ」などを確認し、物件が津波災害警戒区域内に位置しているかどうか確認することができます。
それ以外にも、自治体が津波災害警戒区域の位置をホームページで公開している場合もあります。
津波災害警戒区域内にある物件の2つのデメリット
災害が発生する可能性が高い
2011年に起こった東日本大震災では、想定外の津波により大きな被害がもたらされました。(余談ですが、僕も当時仙台市に住んでおり、津波の被害は免れましたが被災しました)
津波災害警戒区域は、最大クラスの津波が発生した場合のような最悪の状況下で、「想定外」をなくすようシミュレーションされ指定されている、津波により生命又は身体に危害が生ずる可能性が高い地域です。
そんな危険な地域にあえて住みたい、という方は少ないと思いますので、この点が最大のデメリットとなります。
開発行為や、住宅の建築について規制がかかる
前述の通り、津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)及び津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)内の場合、一定の開発行為や住宅の建築について規制がかかります。
そのため買主にとって希望する建物を建てられない可能性があり、購入客のニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
津波災害特別警戒区域内で受ける建築制限などは「法的瑕疵」に該当します。さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
これらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、売主から買主に対して「告知義務」があります。
当然ながら、売買契約前に買主がそれらの瑕疵を自力で発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵に該当する部分について売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や代金減額請求などを受けることになります。
津波災害警戒区域内にある物件を売却する方法2選
津波災害警戒区域内であることを気にしない買主に売却する
津波災害警戒区域(イエローゾーン)内であれば、住宅の建築などについて特に制限はありませんので、気にしない買主が見つかれば売却することが可能です。
また、津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)や津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)内であっても、建物を建てる予定がなく、例えば駐車場用地など土地として購入したいという買主や、現金客で建物を建て直さずリフォームして住み続けるという買主などを見つけることができれば、売却は可能です。
ただしニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
不動産買取専門業者に売却する
特に津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)や津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)内の物件は、前述したように開発や建築に制限がかかり、災害時には迅速な避難が困難で危険な区域となる可能性もあるため、「訳あり物件」とみなされ長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく、それらのリスクを納得した買主に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
東日本大震災の津波による被災をきっかけとして、2011年に制定された「津波防災地域づくりに関する法律」に基づき、都道府県知事は、津波による深刻な被害が予想され、住民の生命や身体に危害が及ぶ可能性が高い区域を「津波災害警戒区域(イエローゾーン)」と「津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン、レッドゾーン)」のいずれかに指定します。
津波災害警戒区域(イエローゾーン)とは、津波災害の恐れがあり、津波から逃げることができるように警戒避難体制を特に整備すべき区域で、開発行為や住宅の建築について特に制限はありません。
津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)とは、津波災害警戒区域(イエローゾーン)の中でも、津波が発生した場合に建築物が損壊・浸水して著しい危害が生ずるおそれがある区域で、高齢者、障害者、乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設、学校及び医療施設について土地利用規制が設けられ、建築にあたり都道府県知事の許可が必要となります。
津波災害特別警戒区域のうち条例で定めた区域(レッドゾーン)とは、津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)の中でも特に迅速な避難が困難で危険な区域として条例で定められた区域で、土地利用規制に加え、住宅等の一定の開発行為及び建築の規制が条例で追加されます。
物件が津波災害警戒区域内に位置していると判明した場合、次の2つのデメリットが考えられるため、買主に敬遠される可能性が出てきます。
- 災害が発生する可能性が高い
- 開発行為や、住宅の建築について規制がかかる
そんな津波災害警戒区域内にある物件を売却する方法は2つ考えられます。
- 津波災害警戒区域内であることを気にしない買主に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 津波災害警戒区域内でも検討可能
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
津波災害警戒区域内にある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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