親が亡くなり実家を相続したけど、住まないので売却したい。そう思いたって不動産屋さんに家の売却を依頼したけど、なかなか売れない!
そんなお悩みを持つ方へ・・・その家は河川の近くにありませんか?
河川に近い地域は「河川保全区域内」に指定されている場合があります。
「河川保全区域内」にある物件を売却することは条件によって難しい可能性もありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、
- 河川の種類
- 河川保全区域とは
- 河川保全区域内にある物件の3つのデメリット
- 契約不適合責任のリスク
- 河川保全区域内にある物件を売却する方法2選
を、不動産買取専門業者目線で解説します!
この記事を読めば、なかなか売れない河川保全区域内の物件でも、売却する方法が見つかります。
河川の種類
法定河川
この法律は、河川について、洪水、津波、高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もつて公共の安全を保持し、かつ、公共の福祉を増進することを目的とする。
河川法第1条
この法律において「河川」とは、一級河川及び二級河川をいい、これらの河川に係る河川管理施設を含むものとする。
河川法第3条
河川について災害の発生防止、適性利用、流水の正常な機能維持及び河川環境整備と保全を目的とした「河川法」に基づく河川を「法定河川」といいます。
法定河川には下記の3種類がありますが、そのいずれにも該当しない河川は「普通河川」として扱われ、河川法の適用は受けません。
一級河川
この法律において「一級河川」とは、国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川(公共の水流及び水面をいう。)で国土交通大臣が指定したものをいう。
河川法第4条
特に重要な河川は「一級河川」として国土交通大臣が指定、管理します。ただし、一級河川の区間で都道府県知事に管理を委託される「指定区間」もあります。
必ずしも大きな川だけが一級河川というわけではなく、一級河川につながる小さな河川も一級河川として指定されてることも多いようです。
二級河川
この法律において「二級河川」とは、前条第一項の政令で指定された水系以外の水系で公共の利害に重要な関係があるものに係る河川で都道府県知事が指定したものをいう。
河川法第5条
一級河川以外の重要な河川は「二級河川」として都道府県知事が指定、管理します。
準用河川
一級河川及び二級河川以外の河川で市町村長が指定したもの(以下「準用河川」という。)については、この法律中二級河川に関する規定(政令で定める規定を除く。)を準用する。
河川法第100条
一級・二級河川以外にも「準用河川」として市町村長が指定、管理する河川があります。
河川保全区域とは
河川管理者は、河岸又は河川管理施設を保全するため必要があると認めるときは、河川区域に隣接する一定の区域を河川保全区域として指定することができる。
河川法第54条
「河川保全区域」とは、堤防や護岸など洪水、高潮等の災害を防止するための管理施設や河岸を保全するために、河川区域の境界から50mを超えない範囲内で河川管理者が指定した区域をいいます。
河川によって河川保全区域の範囲は異なり、また、同じ河川でも河川保全区域の範囲が変わることがありますので注意が必要です。
河川保全区域を調べるには、自治体の河川課や河川事務所など、その河川の管理者の窓口にてヒアリングすることで確認できます。
河川保全区域内にある物件の3つのデメリット
水害が発生する可能性が高い
河川保全区域は河川に近い区域であるため、大雨や台風、ゲリラ豪雨などにより水害が発生した際に建物や土地へ浸水すると考えられる「浸水想定区域」にも該当する可能性があります。
もし物件や物件の周辺地域が実際に浸水被害にあっている場合や、想定される浸水被害が大規模な場合、将来的な浸水被害を心配して買主が購入をためらい、売却までに時間を要する可能性があります。
「浸水想定区域」については、別記事にて詳しく説明しています。
土地の形状変更や、住宅の建築について規制がかかる
河川保全区域内において、次の各号の一に掲げる行為をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める行為については、この限りでない。
河川法第55条
一土地の掘さく、盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為
二工作物の新築又は改築
河川保全区域において、土地の形状を変更する行為や、工作物の新築または改築を行う場合には、河川管理者の許可が必要になります。
そのため工事内容によっては買主の希望する工事ができない可能性があり、購入客のニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
占用許可が必要となる場合がある
河川区域内の土地を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、河川管理者の許可を受けなければならない。
河川法第24条
河川区域内は原則として一般の方が自由に利用できるものですが、排他的・独占的に利用(占用)する場合には、「占用許可」を受ける必要があります。
原則として個人が継続して独占し利用するような行為については許可されません。
ただし、生活のために設置が必要やむを得ないと認められる通路や階段、排水管の設置などは、例外として最小限の範囲で個人の占用が認められます。
なお、占用許可を受ける場合には占用使用料を支払う必要があり、占用使用料の金額は自治体の条例によって定められています。
また、用途によって5年または10年と占用許可の期間が定められており、期間が過ぎると許可の効力が無くなりますので、再度占用許可申請手続きが必要となります。
契約不適合責任のリスク
一般の方が買い手の場合、特約がない限り売主は「契約不適合責任」を負うというリスクもあります。
契約不適合責任とは、売買の目的物に「契約内容に適合していない部分」がある場合に、売主に課される法的責任のことです。
河川保全区域内で受ける建築制限などは「法的瑕疵」に該当します。さらに中古戸建の場合は、建物の築年数が古くなるほど雨漏りやシロアリの被害などの「物理的瑕疵」がある可能性も高くなります。
これらの瑕疵はプロがしっかり調査・説明しないと買主には分からない可能性があるため、売主から買主に対して「告知義務」があります。
当然ながら、売買契約前に買主がそれらの瑕疵を自力で発見することは難しいため、買主が保護されないようではリスクが高く、安心して売買ができません。
そこで買主を保護するために、契約不適合責任が民法に定められており、瑕疵に該当する部分について売主が買主に告知せずに売却した場合、契約不適合責任を問われ、契約の解除や代金減額請求などを受けることになります。
河川保全区域内にある物件を売却する方法2選
河川保全区域内であることを気にしない買主に売却する
河川保全区域において土地の形状を変更する行為や、工作物の新築または改築を行う場合には、河川管理者の許可が必要になりますので、希望する工事を行えない可能性があります。
しかし土地の形状変更をする予定も建物を建てる予定もなく、その物件を現状のまま使用するという買主を見つけることができれば、売却は可能です。
ただしニーズが狭まるため、大幅な値下げが必要となるリスクや、物件の立地条件次第では買主が見つからないというリスクも覚悟しておくべきでしょう。
すでに家が建っていて、その家をリフォームしようとする場合にも、河川管理者の許可が必要となる場合がありますので、注意が必要です。
不動産買取専門業者に売却する
河川保全区域内の物件は、前述した3つのデメリットから「訳あり物件」とみなされ長期間に渡り買い手が見つからないことも珍しくありません。
訳あり物件の売却については、別記事にて詳しく説明しています。
運よく、それらのリスクを納得した買主に売却できた場合でも、不動産仲介業者へ売却を依頼した場合には、成約時に仲介手数料が発生します。
仲介手数料は法律により計算式が決まっており、物件の売買価格によって変動しますが、数十万円~数百万円と高額になります。
売主にとって「売却に時間がかかり、成約時に仲介手数料がかかり、売却後も契約不適合責任を負う」というリスクも、不動産買取専門業者に家を直接買い取ってもらえば排除できます。
しかも短期間で売却できるうえに仲介手数料もかからず、不動産のプロが直接買取をするため、売買契約に前述した売主の契約不適合責任が免責となる特約が入る場合もあり、売主にとって安心です。
不動産の売却で「買取」を選択するべきケースついては、別記事にて詳しく説明しています。
まとめ
河川について災害の発生防止、適性利用、流水の正常な機能維持及び河川環境整備と保全を目的とした「河川法」に基づく「法定河川」には下記の3種類があります。
- 一級河川
- 二級河川
- 準用河川
「河川保全区域」とは、法定河川の河川区域境界から50mを超えない範囲内で、堤防や護岸など洪水、高潮等の災害を防止するための管理施設や河岸を保全するために河川管理者が指定した区域をいいます。
物件が河川保全区域内に位置していると判明した場合、次の3つのデメリットが考えられるため、買主に敬遠される可能性が出てきます。
- 水害が発生する可能性が高い
- 土地の形状変更や、住宅の建築について規制がかかる
- 占用許可が必要となる場合がある
そんな河川保全区域内にある物件を売却する方法は2つ考えられます。
- 河川保全区域内であることを気にしない買主に売却する
- 不動産買取専門業者に売却する
最後に、不動産買取専門業者に直接売却する場合のメリットは4つあります。
- 河川保全区域内でも検討可能
- 仲介手数料が不要
- 売却までの期間が短い
- 契約不適合責任が免責となる場合がある
河川保全区域内にある物件は仮に売却することができたとしても、相場より安い価格でしか売却できない可能性がありますが、売却する際の様々な手間や負担、リスクを考えたときに、不動産買取専門業者に売却をすることが最も良い結果につながる可能性があります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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