僕はつい最近まで、全国に支店を構える某不動産買取専門会社に、営業マンとして約19年勤務させて頂いていました。
現在は、年老いた両親が夫婦二人で経営する超零細企業を継ぐべく、思い切って長年勤めた不動産買取専門会社を退職し、畑違いの業界で修行をしながら、事業承継の勉強と宅建業者の免許取得準備を始めるところです。
最近まではサラリーマンだった僕にとって、不動産の開業までの手続きはもちろん初めての経験です。そこで、不動産の開業について僕が調べたことや、実際に手続きしたことなどを、このブログに残して行こうと思います。
宅地建物取引業者免許の概要
宅地建物取引業宅地若しくは建物の売買若しくは交換又は宅地若しくは建物の売買、交換若しくは貸借の代理若しくは媒介をする行為で業として行うものをいう。
宅地建物取引業法第2条第2項
「宅地建物取引業」とは、「宅地建物取引業法」という法律に基づき次の業務を行うものとされます。
- 宅地または建物の売買
- 宅地または建物の交換
- 宅地または建物の売買、交換または賃借の代理
- 宅地または建物の売買、交換または賃借の媒介
「宅地建物取引業」と似たもので「不動産業」がありますが、「不動産業」は「宅地建物取引業」以外にもマンション管理や入居者対応、マンション管理業者の監督に関する事務など、不動産に関わる取引全般に関わる業務を含みます。つまり、「宅地建物取引業」は「不動産業」の一部であるといえます。
「宅地建物取引業」を営もうとするものは、宅地建物取引業法の規定により、下記の免許行政庁から免許を受ける必要があります。
- 1の都道府県に事務所を設置し、宅地建物取引業を営む場合は都道府県知事
- 2以上の都道府県に事務所を設置し、宅地建物取引業を営む場合は国土交通大臣
免許の要件
宅地建物取引業の免許を取得する際には、以下の要件をすべて満たす必要があります。なかなか高いハードルです。
免許申請者の要件及び定款への記載要件
宅地建物取引業の免許申請は、個人事業主の場合は個人が、法人の場合はその法人の代表者が免許申請者として申請を行います。
法人の場合は、定款の目的に「宅地建物取引業」「宅地または建物の売買、交換、または貸借の代理、媒介」等の記載がされていることが必要となりますので、そのような記載がない場合、宅地建物取引業免許を申請する前に定款の目的変更が必要となります。
ちなみに今回、僕が免許申請をする場合も、両親が営む既存事業は不動産とまったく関係のない業種であるため、定款の目的変更を行います。
欠格要件に該当しない
国土交通大臣又は都道府県知事は、第三条第一項の免許を受けようとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は免許申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては、免許をしてはならない。
宅地建物取引業法第5条
免許を受けようとするものが宅地建物取引業法第5条に規定する欠格要件に該当する場合、宅建業免許を受けることが出来ません。
宅地建物取引業法第5条に規定する欠格要件はおおむね下記の通りです。
- 免許不正取得、不正行為または業務停止処分違反をして免許を取り消されたことがある
- 免許不正取得、不正行為又は業務停止処分違反をした疑いがあるとして聴聞の公示をされた後、廃業の届出を行ったことがある
- 禁錮以上の刑又は宅地建物取引業法違反等により罰金刑に処せられたことがある
- 免許の申請前5年以内に宅地建物取引業に関し不正または著しく不当な行為をしたことがある
- 成年被後見人、被保佐人または破産者で復権を得ない
- 宅地建物取引業に関し不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかである
- 事務所に従業者5人に1人の割合で専任の宅地建物取引士を設置していない
今回の僕のケースではもちろん、どれにも該当していません。
専任の宅地建物取引士の設置
専任とは、その事務所に常勤し、宅地建物取引の業務に専従できる状態であることをいいます。
1つの事務所において、代表者を含み業務に従事する者5名に1名以上の割合で「常勤性」と「専従性」を満たす「専任の宅地建物取引士」を設置することが義務付けられています。
ちなみに今回、僕が免許申請をする場合は、他に宅地建物取引士がいないため、僕自身が専任の宅地建物取引士となります。
代表者の常勤要件
免許申請者である代表者は原則、事務所に常駐していなければなりません。代表者が常勤できない本店や支店がある場合は、政令使用人(支配人や支店長)を設置する必要があります。
ちなみに今回、僕が免許申請をする場合は、現在代表取締役である父が常駐しているため要件クリアです。
事務所の要件
宅建業免許を受けるには、事務所を設置する必要があります。事務所の定義は、
- 本店(主たる事務所)
- 宅地建物取引業を営む支店(従たる事務所)
- 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約締結権限を有する使用人をおくもの
と定められています。事務所は、宅地建物取引業の業務を継続的に行える機能を持ち、社会通念上事務所として認識される程度の独立した形態を備えていなければなりません。
テント張りやホテルの一室などはもちろんのこと、戸建て住宅やマンションの一部を事務所とする場合、または同一フロアに他法人と同居する場合等も、事務所として認められていません。
ただし、専用の出入り口があり、固定式のパーテーションなどによって仕切られ、居住部分や他法人の事務所部分を通らずに事務所に直接入ることができる等、独立性が保たれているとみなされる要件を満たせば認められる場合があります。
ちなみに今回、僕が免許申請をする場合は、同一法人かつ現在すでに事務所があるため要件クリアです。
営業保証金の供託または保証協会への加入要件
宅地建物取引業を開始するためには、免許を受けるだけでなく下記の「営業保証金」を事務所の所在地を管轄する供託所に供託しなければなりません。
- 主たる事務所の場合は1,000万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき500万円
ただし、「保証協会」に加入し、下記の「弁済業務保証金分担金」を納付した場合には、「営業保証金」の供託が免除されます。
- 主たる事務所の場合は60万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき30万円
「保証協会」は、宅地建物取引業に関して苦情の解決、従事者への研修、取引により生じた債権の弁済、債務の保証を業務とする機関として 国土交通省から指定を受けた公益法人です。
保証協会として次の2つの団体があります。
実務上、営業保証金の供託をして開業するケースは少なく、保証協会に加入することが通常となっています。
僕も免許申請をするにあたり「保証協会」へ加入する予定ですが、どちらの団体にするかはまだ検討中です。
まとめ
「宅地建物取引業」とは、「宅地建物取引業法」という法律に基づき次の業務を行うものとされます。
- 宅地または建物の売買
- 宅地または建物の交換
- 宅地または建物の売買、交換または賃借の代理
- 宅地または建物の売買、交換または賃借の媒介
「宅地建物取引業」を営もうとするものは、下記の免許行政庁から免許を受ける必要があります。
- 1の都道府県に事務所を設置し、宅地建物取引業を営む場合は都道府県知事
- 2以上の都道府県に事務所を設置し、宅地建物取引業を営む場合は国土交通大臣
宅地建物取引業の免許を取得する際には、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 免許申請者の要件及び定款への記載要件
- 欠格要件に該当しない
- 専任の宅地建物取引士の設置
- 代表者の常勤要件
- 事務所の要件
- 営業保証金の供託または保証協会への加入要件
「営業保証金」は下記の金額を、事務所の所在地を管轄する供託所に供託しなければなりません。
- 主たる事務所の場合は1,000万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき500万円
ただし、「保証協会」に加入し、下記の「弁済業務保証金分担金」を納付した場合には、「営業保証金」の供託が免除されます。
- 主たる事務所の場合は60万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき30万円
保証協会としては「公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会」と「公益社団法人不動産保証協会」の2つの団体があります。
土地や建物は高価な金額で取引されるため、宅地建物取引業法では事業者の不正防止と購入者の保護を図る目的で許可された事業者しか参入できない仕組みをつくっており、宅地建物取引業の免許を取得するにはかなり高いハードルがあります。
僕も宅地建物取引業免許の取得に向けて、これから手続きを進めていきたいと思います!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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