僕はつい最近まで、全国に支店を構える某不動産買取専門会社に、営業マンとして約19年勤務させて頂いていました。
現在は、年老いた両親が夫婦二人で経営する超零細企業を継ぐべく、思い切って長年勤めた不動産買取専門会社を退職し、畑違いの業界で修行をしながら、事業承継の勉強と宅建業者の免許取得準備を始めるところです。
最近まではサラリーマンだった僕にとって、不動産の開業までの手続きはもちろん初めての経験です。そこで、不動産の開業について僕が調べたことや、実際に手続きしたことなどを、このブログに残して行こうと思います。
保証協会へ加入する理由
宅地建物取引業を開始するためには、いくつかの要件を満たし免許を受けたうえで、さらに下記の「営業保証金」を事務所の所在地を管轄する供託所に供託しなければなりません。
- 主たる事務所の場合は1,000万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき500万円
ただし、「保証協会」に加入し、下記の「弁済業務保証金分担金」を納付した場合には、「営業保証金」の供託が免除されます。
- 主たる事務所の場合は60万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき30万円
そのため実務上では、営業保証金の供託をして開業するケースは少なく、保証協会に加入することが通常となっています。
「保証協会」は、宅地建物取引業に関して苦情の解決、従事者への研修、取引により生じた債権の弁済、債務の保証を業務とする機関として 国土交通省から指定を受けた公益法人です。
保証協会として次の2つの団体があります。
それぞれ比較してみましょう。
全国宅地建物取引業保証協会とは
「全国宅地建物取引業保証協会(以下、「全宅保証」といいます。)」は、「全国宅地建物取引業協会連合会(以下、「全宅連」といいます。)」を母体として設立され、東京都千代田区岩本町に事務所を置く公益法人です。
「全宅保証」の入会者は、同時に事務所が属する都道府県の宅地建物取引業協会(以下、「宅建協会」といいます。)にも入会することになります。そして47都道府県の宅建協会の全国組織が「全宅連」です。
「全宅連」は1967年9月に設立され、「ハトのマーク」がシンボルです。全国の宅地建物取引業者の約80%、実に10万社近くが所属しており、その規模の大きさが特徴です。
入会にあたり「弁済業務保証金分担金」以外にも様々な費用があり、各都道府県や入会時期によりその総額は異なりますが、例えば熊本県の場合ですと、入会費用の合計額は下記のようになります。
宅建協会 入会金 | 1,000,000円 |
年会費 | 20,000円 |
保証協会 入会金 | 200,000円 |
年会費 | 6,000円 |
弁済業務保証金分担金 | 600,000円 |
熊本県宅建政治連盟 入会金 | 50,000円 |
年会費 | 4,000円 |
会員と別に専任取引士を置く場合 入会金 | 50,000円(専任取引士1名あたり) |
年会費 | 12,000円(専任取引士1名あたり) |
合計 | 1,880,000円~1,942,000円 |
不動産保証協会とは
「不動産保証協会」は、「全日本不動産協会」を母体として設立され、東京都千代田区紀尾井町に事務所を置く公益法人です。
「不動産保証協会」の入会者は、同時に「全日本不動産協会」にも入会することになります。
「全日本不動産協会」の歴史は古く1952年6月に設立され、「ウサギのマーク」がシンボルです。全国の宅地建物取引業者の約20%、3万社近くが所属しており、その歴史の古さが特徴です。
「全宅連」と同じく入会にあたり「弁済業務保証金分担金」以外にも様々な費用があり、各都道府県や入会時期によりその総額は異なりますが、例えば熊本県の場合ですと、入会費用の合計額は最大約165.8万円とのことです。
全日本不動産協会 入会金 | 675,000円 |
年会費 | 12,000円 |
講習会費 | 3,000円 |
流通事業協力事業費 負担金 | 100,000円 |
年会費 | 12,000円 |
不動産保証協会 入会金 | 80,000円 |
年会費 | 12,000円 |
弁済業務保証金分担金 | 600,000円 |
全国不動産協会(TRA) 入会金 | 75,000円 |
年会費 | 15,000円 |
全日本不動産政治連盟 入会金 | 70,000円 |
年会費 | 4,000円 |
合計 | 1,658,000円 |
全宅連と全日本不動産協会の比較
入会にかかる費用
前述したように「全宅保証」は全国の宅地建物取引業者の約80%、実に10万社近くが所属しており、その規模の大きさが特徴です。
反対に「不動産保証協会」は1952年6月に設立され、その歴史の古さが特徴です。
熊本県の場合を参考に、入会にかかる費用を比べてみると下記のようになります。
項目 | 全宅連(ハト) | 全日本不動産協会(ウサギ) |
協会 入会金 | 1,000,000円 | 675,000円 |
年会費 | 20,000円 | 12,000円 |
保証協会 入会金 | 200,000円 | 80,000円 |
年会費 | 6,000円 | 12,000円 |
弁済業務保証金分担金 | 600,000円 | 600,000円 |
政治連盟 入会金 | 50,000円 | 70,000円 |
年会費 | 4,000円 | 4,000円 |
その他費用 入会金など | 50,000円 (専任取引士1名あたり) | 178,000円 |
年会費 | 12,000円 (専任取引士1名あたり) | 27,000円 |
合計 | 1,942,000円 | 1,658,000円 |
福岡県の場合でも入会にかかる初期費用は、全日本不動産協会の方が安くなるようです。ただし熊本県の場合、入会後に毎年かかる年会費は、全宅連の方が若干安くなります。
サポート内容について
調べてみたところ、「全宅連」と「全日本不動産協会」のどちらに加盟しても、起業後には下記のような様々なサポートを受けられますので、大きな差はないようです。
- 講習などの開業支援
- 研修やセミナーなどの育成支援
- 必要書式ダウンロード
- 税務・法務の無料相談
- 各種部会の開催
- 各種業務支援
- レインズの利用 など
レインズとは
「レインズ(REINS)」とは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムです。
会員となっている不動産会社が売主や貸主の依頼に基づいてこの「レインズ」に不動産情報を登録することで、不動産業界全体が連携して買主や借主を探すことができます。 また、不動産会社は買主や借主に対し、登録された最新の豊富な情報の中から最適な物件を紹介することができます。
売却物件情報や顧客情報など多くの個人情報を取り扱っているため、一般の人は利用できず、不動産会社だけが利用可能です。
不動産売買の媒介契約には3種類ありますが、そのなかで「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」については、このレインズへ物件情報の登録が義務付けられています。
媒介契約の種類については、別記事にて詳しく説明しています。
どちらがオススメ?
結局のところ、どちらを選んでも大きな差はありません。自分自身が優先すべき内容によってどちらかを選ぶことになると思います。
会員数の多さから、会員数のネットワークを期待するのなら全宅連、初期費用を抑えたいと思えば全日本不動産協会、というような感じでしょうか。
開業にあたりアドバイスをくれた親しい方が加入している団体を選ぶというケースも多いようです。
まとめ
宅地建物取引業を開始するためには、いくつかの要件を満たし免許を受けたうえで、さらに下記の「営業保証金」を事務所の所在地を管轄する供託所に供託しなければなりません。
- 主たる事務所の場合は1,000万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき500万円
ただし、「保証協会」に加入し、下記の「弁済業務保証金分担金」を納付した場合には、「営業保証金」の供託が免除されます。
- 主たる事務所の場合は60万円
- 従たる事務所(支店)の場合は1店舗につき30万円
「保証協会」は、宅地建物取引業に関して苦情の解決、従事者への研修、取引により生じた債権の弁済、債務の保証を業務とする機関として 国土交通省から指定を受けた公益法人で、次の2つの団体があります。
- 全宅保証(公益社団法人全国宅地建物取引業保証協会)
- 公益社団法人不動産保証協会
「全宅保証」は「全宅連」を母体として1967年9月に設立され、「ハトのマーク」がシンボルです。全国の宅地建物取引業者の約80%、実に10万社近くが所属しており、その規模の大きさが特徴です。
「不動産保証協会」は、「全日本不動産協会」を母体として1952年6月に設立され、「ウサギのマーク」がシンボルです。全国の宅地建物取引業者の約20%、3万社近くが所属しており、その歴史の古さが特徴です。
入会にかかる初期費用は、熊本県、福岡県ともに全日本不動産協会の方が安くなるようですが、サポート内容についてはどちらの協会にも大差はありません。
会員数の多さから会員数のネットワークを期待するのなら全宅連、初期費用を抑えたいと思えば全日本不動産協会というように、自分自身が優先すべき内容によってどちらかを選ぶことになります。
僕も、どちらの保証協会に加盟するか、もうしばらく悩んでみます。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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