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「引き渡し猶予特約」売主のリスク4選

不動産売却
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親が亡くなり、一緒に住んでいた実家を相続したけど、売却して新しい家に住み替えたい!

でも、今住んでいる実家の売却代金を購入資金にしないと、新しい家が購入できない・・・。

仮住まいは手間もお金もかかるのでしたくないし、できれば新しい家の引き渡しを受けるまでの数日間でいいので、売却後も今の家に住ませてもらいたい・・・。

そんなお悩みを持つ方へ・・・「引き渡し猶予特約」をご存じですか?

不動産の売買契約に「引き渡し猶予特約」をつけることで、買主に物件の引き渡しを一定期間待ってもらうことができ、わざわざ賃貸を借りて一時的に仮住まいをする手間もお金もかける必要がなくなります。

ただし、「引き渡し猶予特約」をつけることで、売主に様々なリスクも発生する可能性がありますので、「不動産買取再販専門会社」で働いていた「不動産の買取と販売」のプロである僕が600件以上の売買経験をもとに、

  • 一般的な不動産の引き渡し
  • 引き渡し猶予特約とは
  • 買主のデメリット、リスク
  • 売主のリスク4選

を、動産買取専門業者目線で解説します!

この記事を読めば、「引き渡し猶予特約」をつけることの注意点が分かります。

一般的な不動産の引き渡し

一般的に不動産の売買は、売買代金全額の受領と同時に不動産を引き渡すことが原則です。
買主への所有権移転登記申請も同日に行われます。

つまり「売買代金受領日=不動産引き渡し日=所有権移転日」となります。これを「決済日」といいます。

そのため、売主は決済前日までに不動産を空き家の状態にしておき、決済日当日から買主が不動産を使用できるようにします。

もし、売主が決済日までに不動産を空き家の状態にして引き渡しができない場合、通常は決済日を延期することが一般的です。

引き渡し猶予特約とは

売主の都合により売買代金受領と同時に不動産を引き渡すことができないと最初から分かっている場合には、「引き渡し猶予特約」をつけた売買契約を締結することがあります。

「引き渡し猶予」とは、買主にお願いして売買代金受領日から数日間、不動産の引き渡しを遅らせてもらうことです。

引き渡し猶予期間は「売買代金受領日の翌日から○日間」というように具体的な日数を定めますが、一般的には3日から10日程度と短期間で設定されます。

あくまで売主の一方的かつ一時的な都合によるものだからです。

「売り先行」の場合に必要となる

引き渡し猶予特約を利用するのは、今の住まいを売却して新しい住まいを購入する「買い替え」の場合になると思われますが、買い替えにも「買い先行」と「売り先行」があります。

「買い先行」の場合は、今の住まいを売却する前に、先に新しい住まいを購入しておく方法です。今の住宅を売却する前に引っ越しが可能なので、引き渡し猶予特約をつける必要がありません。

逆に「売り先行」の場合、今の住宅を売却した代金を資金として新しい住宅を購入する方法となります。

通常はいったん賃貸などへ仮住まいをしてから今の住宅を引き渡しますが、仮住まいに移る費用が捻出できない場合などに、引き渡し猶予特約が必要となることがあります。

引き渡し猶予特約の具体例

例えば、売主が今住んでいる不動産Aを売却後、新たに不動産Bを購入し住み替えを予定している場合に、7日間の「引き渡し猶予特約」をつけて売買契約を締結したとします。

売主は不動産Aの売買代金を受領後7日以内に不動産Bの引き渡しを受け、不動産Aから直接不動産Bへ引っ越すことができます。

いったん仮住まいへ引っ越す必要がなく、手間と費用が軽減されるため、売主にとって非常に有利な内容の特約なのです。

買主のデメリット、リスク

反対に、「引き渡し猶予特約」は買主にとって、例えば次のようなデメリットやリスクがあります。

  • 売買代金を支払い済みにもかかわらず、一定期間不動産を使用できないデメリット
  • 売買代金を支払い済みにもかかわらず、特約を守らない売主にいつまでも物件に居座られるリスク

買主にはまったくメリットがないため、「引き渡し猶予特約」をつけるためには、このようなデメリットやリスクを許容してくれる買主を見つけることが必要となります。

「引き渡し猶予特約」売主のリスク4選

「引き渡し猶予特約」は売主に有利なものですが、例えば次のようなリスクはあります。

売主は立場的に弱くなる

引き渡し猶予とは「売買代金は先に払ってください、でも引越しするまでの数日間家に泊まらせてください」という売主から買主へのお願いなので、売主は立場的に弱くなるというリスクがあります。

引き渡し猶予期間中に賃料を発生させると賃貸借契約となってしまうため、一般的に引き渡し猶予特約は無償で貸し出す「使用貸借」という形態をとります。

使用貸借とは、「無償で借主にモノを貸す、または無償で貸主からモノを借りる」ことです。

無償という性質から借地借家法は適用されず、民法の規定に従います。

そのため、有償で貸し借りをする賃貸借契約とは異なり、借主(=売主)の立場が弱くなります。

引き渡し猶予特約を許容してくれる買主がみつからない

前述した通り、引き渡し猶予特約は買主にとってまったくメリットがないどころか、むしろデメリットやリスクしかありません。

言ってみれば引き渡し猶予特約は買主の善意です。

特に売主の住み替え先物件がまだ決まっていないような状態では、「本当に売主は出ていくのか」と不安に感じ、引き渡し猶予特約を承諾してくれる買主は見つからない可能性が高いと思われます。

売却価格が安くなる

引き渡し猶予特約は買主にとって、売買代金を支払ったにもかかわらず一定期間物件を使用できないという状況になります。

さらに引き渡し猶予期間は一般的に使用貸借契約となるため、賃料も入ってきません。

そのようなデメリットから、相場価格よりも安く価格を設定しないと買主が見つからない可能性があります。

売買代金の支払いを一部留保される可能性がある

これは僕が不動産買取業者に勤めていたころに、実際に経験したケースです。

引き渡し猶予特約を付けて売買契約を締結しましたが、決済日に売買代金を全額はお支払いせず、代金の一部につき支払いを留保しました。

当然、所有権は決済日に移転させます。

そして実際に売主が物件を引き渡した時点で、留保していた残りの売買代金をお支払いした、ということがありました。

珍しいケースだとは思いますが、このように引き渡し猶予特約をつける代わりに、売買代金も一度に全額は支払わず一部留保し、引渡完了時点で留保分を支払うという方法も考えられます。

この場合、売主は売買代金を全額払ってもらえないリスクを、買主は物件を引き渡してもらえないリスクを、ともに負うことになります。

まとめ

不動産の売買は、売買代金全額の受領と同時に不動産を引き渡すことが一般的ですが、「売り先行」の買い替えなどの場合は引き渡し猶予特約が必要となることがあります。

引き渡し猶予特約は、いったん仮住まいへ引っ越す必要がなく、手間と費用が軽減されるため売主にとってはメリットのある特約ですが、その反面、買主にとってはメリットがなく、次のようなデメリットやリスクを許容してくれる買主を見つけることが重要です。

  • 売買代金を支払い済みにもかかわらず、一定期間不動産を使用できないデメリット
  • 売買代金を支払い済みにもかかわらず、特約を守らない売主にいつまでも物件に居座られるリスク

そして売主も、次のようなリスクがあることを理解する必要があります。

  • 使用貸借となり売主は立場的に弱くなる
  • 引き渡し猶予特約を許容してくれる買主がみつからない
  • 売却価格が安くなる
  • 売買代金の支払いを一部留保される可能性がある

売主は引き渡し猶予特約によって生じるメリットだけではなく、リスクも十分考慮したうえで引き渡し猶予特約を締結することをおすすめいたします。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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